□ 第42話 鬼ごっこ □ ページ42
.
デウスはひとり、警官の帽子を目深に被り宝石を守るため立っていた。考えているのはバラトと千秋のこと。千秋と出会ってからの淡い恋心もバラトへの尊敬の心もあるのだが、どうにもどちらも持てるほど自分の心は強くはなかった。千秋はきっと、バラトが好きなのだろう。彼女自身それに気付いていないようだが、こちらからすれば丸わかりというモノである。二人の親しげな姿を見たときからデウスの心は千秋を思う度甘酸っぱく締め付けられる訳で、バラトへの色々な感情が渦巻いてならなかった。
尊敬、嫉妬。敬愛、憎悪。なんでバラトなんか？ 俺ならちゃんと全うな幸せを与えてあげられる。羨ましい、でも二人を思うなら手を引くべきかもしれない。バラトを救えるのもきっと千秋しか―――……。悶々と考えていれば目の前に気が付けば犯罪者がいた。警察の帽子を被っている。その男は一周回って清々しいほどの胡散臭い笑顔を浮かべた。
「……バラト…！」
「おっと危ねぇ」
咄嗟に腕を振り切るが華麗にかわされる。あぁ、くそ。なんで。どうして。やりきれない気持ちが頭の中を渦巻いているのも知らず、バラトはデウスの背後の宝石を狙う。デウスは袖口から拳銃を滑らせるように取りだしバラトに向けた。
「人の気も知らずに……！」
「？ 何怒ってんだお前」
このまま引き金を引いてしまうのもいいかもしれない。彼女が自分の恋心に気付いていないのなら、それならまだ彼女をかっさらうチャンスもある。ここでバラトを殺して、バラトを失った弱味に漬け込むのだって。バラトさえいなければこの気持ちは報われる。「…ワケないだろ」
「…お望みのもんはここだぜ？盗んでみろよ泥棒さん」
「クク、面白ェ。そうこなくっちゃあなぁ警察さんよ」
デウスは別の本物と思われるダイヤモンドを取りだし、そのまま逃げ出した。すると他の警察役が後からその位置につく。「オイオイ鬼はそっちだろ」と言いながらバラトはデウスを追った。バラトは懐かしい気分だった。デウスに武術を教えたのはバラトだ。まだ顔立ちが幼いステラとデウスに出会った時から、今までずっと面倒を見てきた。ステラに色々な知識を教え込み、デウスには仕事で使う技術を。あの日から比べ物にならないほど逞しくなって成長したデウスと戦っている今を、何処か楽しんでいた。実は、ステラとデウスが思うより……、二人はバラトにとって“特別”だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 69人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くろせ(プロフ) - 漣さん» ほんとですね！誤字報告ありがとうございます！訂正致します！ (2019年4月2日 17時) (
レス) id: 09d294978c (このIDを非表示/違反報告)
漣(プロフ) - いつも更新楽しみにしている者です。42話の｢ステラは別の本物と思われるダイヤモンドを取りだし、そのまま逃げ出した。｣という文章なのですが、デウス君ではないでしょうか？勘違いでしたらすみません！コメント失礼しました。 (2019年4月2日 17時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)
飴ん子(プロフ) - くろせさん» ああ、そうでしたか。すみません！！！ 了解です、その機会があれば、またコメントします。バラトニキと千秋ちゃんがすこなのでお気に入りに登録します。改めて失礼しました。 (2019年4月1日 14時) (レス) id: 1a98819731 (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 飴ん子さん» すみません、今はキャラクターは募集しておりません…。また続編とかで募集すると思うので、その時までお待ちくださいませ！ (2019年4月1日 13時) (レス) id: 09d294978c (このIDを非表示/違反報告)
飴ん子(プロフ) - 素敵な一次創作ですね…！バラトさんすこ。(唐突) この素敵な企画に是非ともキャラクター提供したいのですが、どうでしょうか？ (2019年4月1日 11時) (レス) id: 1a98819731 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
