□ 第39話 虎とウサギ □ ページ39
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狭い部屋の中、静かに顔色を伺い合いながら時が流れるのを待つ。千秋は冷や汗が流れるのを止められずいた。こんな状況だったら、誰しもが千秋がやったのではないかと疑うだろう。そんないつか「人殺しだ」と指を指されるような目を思いだし更に足がブルブルと震え出す。遂に誰かが啖呵を切り、千秋がやったのだろうと言い出した。…その時だ。
「――――この子は違うよ」
「……ス、ステラ…」
千秋の前にすっと現れたのは、いつにも増して真剣な顔色のステラだった。驚いてステラを見上げるとステラは千秋の方に振り返り、ニコッといつものように微笑んだ。するとまたすぐ真剣な顔に戻る。「……ギャップ萌えだ」小さい声で感嘆を漏らしながら自分を守るように手を翳したステラを、千秋は瞳を揺らして見ていた。
「ステラが人の肩持つなんてめっずらし〜♪」
「嫌だな、ボクは無駄な犠牲者を出したくないだけ。千秋ちゃんはボクのお客だしね。お客さんは減らしたくないもの」
「根拠、言ってみろよ」
「千秋ちゃんは丸腰だよ。人を殺せる様な度胸もない」
「ほぉ?証拠は?」
「ボクと―――…、アリスちゃんが証人になるよ。ね、アリスちゃん。千秋ちゃんは、さっきドレスに着替えたよね。武器なんて持ってた?」
「ふふ、いいえ、持ってないわ!」
「ステラ……アリスさん…」
厳つい男にも怯まず、ステラは微笑みながら見上げる。質問にも怯えることなく淡々と。アリスもだ。決して背が高くも強そうにも見えない二人だが、千秋からすれば頼りになりすぎる二人だった。ありがとう、そう言って千秋は二人に微笑んだ。
「あなた、さっきから厭に千秋ちゃんを疑うね。…もしかして、あなたが嘘つきさんだったりするの?」
「違うね」
「どうだか」
ステラは確かめるように目を細めながら微笑む。一見、ライオンに立ち向かう子猫か虎の前にいるウサギなのに、どうしてもステラの方が強く見える。するとステラは「ボク知ってるよ」と言って自分より背の高いその男に背伸びをしながら耳打ちをした。数秒後にはその男は顔を真っ青にし汗をだらだらとかき、立っていられなくなった。もう既に――…、男は虎の前にいるウサギ状態だ。ステラは冷酷な笑みを浮かべネクタイを緩めた。そしてシンキングタイムが終わり、投票の時間となる。誰もが男に指を指す中、千秋は手を挙げられずにいた。
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くろせ(プロフ) - 漣さん» ほんとですね!誤字報告ありがとうございます!訂正致します! (2019年4月2日 17時) (レス) id: 09d294978c (このIDを非表示/違反報告)
漣(プロフ) - いつも更新楽しみにしている者です。42話の「ステラは別の本物と思われるダイヤモンドを取りだし、そのまま逃げ出した。」という文章なのですが、デウス君ではないでしょうか?勘違いでしたらすみません!コメント失礼しました。 (2019年4月2日 17時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)
飴ん子(プロフ) - くろせさん» ああ、そうでしたか。すみません!!! 了解です、その機会があれば、またコメントします。バラトニキと千秋ちゃんがすこなのでお気に入りに登録します。改めて失礼しました。 (2019年4月1日 14時) (レス) id: 1a98819731 (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 飴ん子さん» すみません、今はキャラクターは募集しておりません…。また続編とかで募集すると思うので、その時までお待ちくださいませ! (2019年4月1日 13時) (レス) id: 09d294978c (このIDを非表示/違反報告)
飴ん子(プロフ) - 素敵な一次創作ですね…!バラトさんすこ。(唐突) この素敵な企画に是非ともキャラクター提供したいのですが、どうでしょうか? (2019年4月1日 11時) (レス) id: 1a98819731 (このIDを非表示/違反報告)
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