□ 第33話 エスコート □ ページ33
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窓際のスペースにある洒落たソファーにいつもの様にどっかり偉そうに座っていた男性は、よくよく見ると先程から聞こえていた声の主であるバラトだった。黒いシャツに薔薇の様に真っ赤なスーツ、無数のブレスレットや指輪。長い前髪はセットされ、いつも隠れている右目は少し露出していた。刑事になりすましていた時のバラトとはまた別の大人の雰囲気だった。こんなの気づくはずないじゃないか、と千秋はいつもの格好と比べていた。
「そうだガキ、目ぇ閉じてろ」
「え?」
バラトは思い出した様に立ち上がると千秋の側に歩いてきた。言われたように目を閉じたが何をしているのか気になる。うっすら目を開けるとバラトの胸辺りが目の前にあり、顔のすぐ横にはバラトの頭があった。暫くすると首は少し重くなり冷たい紐の感覚が首筋を駆けた。バラトが自分の近くから離れると、千秋は自分の首にかけられたものを確認した。
「ネックレス…?」
「プレゼントだ。なくすなよ」
「……」
「あ?…なんだよ、気に入らなかっ…」
「ありがとうバラト〜ッ!嬉しい!大事にする!」
「うわっ、引っ付くなガキ!」
ネックレスは瞳のような形をしていて、黒目と思われる部分はいつもバラトが着ている趣味の悪いコートについた目玉のブローチと同じ色だった。でもそれよりずっと小さいしずっと可愛らしい。千秋はバラトから初めてものを貰って、嬉しくて抱き付いた。「触るんじゃねぇ」と千秋をひっぺがし、代わりに優しく手を引いた。
「え?え??」
「エスコートだよ。パーティーじゃ基本だろ。俺の連れなんだからそれらしく振る舞えよ」
「…服装変わると性格も変わるの?」
「舐めんなクソガキ。ぶっ飛ばすぞ」
バラトは会場と思われる恐らく一番大きい部屋の扉を開けると、そこは一気に別世界へと変わり優雅な音楽を掻き消す音で溢れていた。腕組め、短くそう言うと千秋はがっつりバラトの腕にしがみついた。遠くではガシャガシャとテーブルや皿が舞い、こっちでは銃を掲げて遊んでいる。が、そんな荒くれ者たちもバラトを見るとたちまち静かになった。
「お前バラトか?前に来たときより大分老けたな!」
「今が若すぎんだよバカ」
「バラト〜、こっち来てよ〜」
「ビッチは金持ちにゴマでも擦ってろ」
バラトが来た、というニュースは広い会場の中でもたちまちすぐに広がり、犯罪者たちはバラトや千秋を囲んだ。バラトは「邪魔だ」と手を銃の形にして自分の頭に突き付けトントンと軽く指先で叩いた。
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くろせ(プロフ) - 漣さん» ほんとですね!誤字報告ありがとうございます!訂正致します! (2019年4月2日 17時) (レス) id: 09d294978c (このIDを非表示/違反報告)
漣(プロフ) - いつも更新楽しみにしている者です。42話の「ステラは別の本物と思われるダイヤモンドを取りだし、そのまま逃げ出した。」という文章なのですが、デウス君ではないでしょうか?勘違いでしたらすみません!コメント失礼しました。 (2019年4月2日 17時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)
飴ん子(プロフ) - くろせさん» ああ、そうでしたか。すみません!!! 了解です、その機会があれば、またコメントします。バラトニキと千秋ちゃんがすこなのでお気に入りに登録します。改めて失礼しました。 (2019年4月1日 14時) (レス) id: 1a98819731 (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 飴ん子さん» すみません、今はキャラクターは募集しておりません…。また続編とかで募集すると思うので、その時までお待ちくださいませ! (2019年4月1日 13時) (レス) id: 09d294978c (このIDを非表示/違反報告)
飴ん子(プロフ) - 素敵な一次創作ですね…!バラトさんすこ。(唐突) この素敵な企画に是非ともキャラクター提供したいのですが、どうでしょうか? (2019年4月1日 11時) (レス) id: 1a98819731 (このIDを非表示/違反報告)
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