□ 第28話 世界一 □ ページ28
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目が覚めると千秋は病院のベッドにいた。横に目をやるとベッドの脇ではバラトが窓の外を静かに眺めていた。バラトは首を少しだけ動かし目線をこちらに寄越した。「やっと起きたな」そう言うとバラトはベッドから離れた。徐々に脳が覚醒していくと千秋は思い出した様に声を上げ飛び起きた。
「ステラは!?」
「もうとっくのとうに起きたよ。言ったろ裏社会一の闇医者だって」
「よかったぁ…死んじゃってたらどうしようかと思ったぁ〜…」
無事を聞くとみるみる内に千秋はその瞳に涙を溜め忽ちその顔は雨ざらしとなった。バラトはそれを見て動きを止める。自分が泣かせているみたいじゃないか。千秋は責任感で押し潰されそうであった。バラトに考えろと言われてからと必死に考えてはいたが一向に意味に気付くことが出来なかった。そのせいで手遅れになるのではないかという不安で。バラトはそれを聞くと千秋の頭に手を乗せた。
「お前はよくやった。俺じゃ気付けなかった事をやってのけたんだ。世界一の犯罪者の力を超えたんだ、お前は世界一の洞察力の持ち主だよ。胸張ってろ、アキ」
バラトは無表情で、ただそれでも貫くような赤い瞳でただ真っ直ぐに千秋を見つめていた。千秋はその目が好きだった。これほど自分を真っ直ぐ向き合ってくれる人を知らなかった。思えば初めてガキ以外で呼ばれた。認めてもらえたと思うと千秋は心が踊って仕方がなかった。と思えば自分の頭に圧が掛かる。どうやら自分を台にして立ったようだ。全く、なんて思いながら千秋は微笑んで見せるのだった。バラトはそれを見ると部屋を出ていった。
「ごめんねデウス、ボクのせいで…」
「…別に俺ステラの為に仕事してる訳じゃない」
「え?」
「俺が仕事してるのは…ステラの役に立ちたいって自己満。だから俺の為」
「じゃあ、どうしてボクのこと避けるの?」
「は?避ける?避けてねーよ」
「え、だって仕事ボクと一緒にしたがらないし」
「…それはステラの邪魔にならないように…」
「邪魔のわけないよ。…デウスはボクの世界一の
病室で静かにそう話す双子。千秋はドアの向こう側でそれを聞いていた。イタリア語の意味なんてわからないが、なんとなくもう大丈夫だろうという理由のない確信があった。さぁ、行こうか――――…と、足を踏み出そうとすると後ろのドアがガラリと開く。それに驚いた千秋は例の奇声をあげるのだった。
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くろせ(プロフ) - 漣さん» ほんとですね!誤字報告ありがとうございます!訂正致します! (2019年4月2日 17時) (レス) id: 09d294978c (このIDを非表示/違反報告)
漣(プロフ) - いつも更新楽しみにしている者です。42話の「ステラは別の本物と思われるダイヤモンドを取りだし、そのまま逃げ出した。」という文章なのですが、デウス君ではないでしょうか?勘違いでしたらすみません!コメント失礼しました。 (2019年4月2日 17時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)
飴ん子(プロフ) - くろせさん» ああ、そうでしたか。すみません!!! 了解です、その機会があれば、またコメントします。バラトニキと千秋ちゃんがすこなのでお気に入りに登録します。改めて失礼しました。 (2019年4月1日 14時) (レス) id: 1a98819731 (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 飴ん子さん» すみません、今はキャラクターは募集しておりません…。また続編とかで募集すると思うので、その時までお待ちくださいませ! (2019年4月1日 13時) (レス) id: 09d294978c (このIDを非表示/違反報告)
飴ん子(プロフ) - 素敵な一次創作ですね…!バラトさんすこ。(唐突) この素敵な企画に是非ともキャラクター提供したいのですが、どうでしょうか? (2019年4月1日 11時) (レス) id: 1a98819731 (このIDを非表示/違反報告)
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