□ 第14話 もういいよ □ ページ14
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「もういいよ」
「…あ？」
「もういいよバラト、怖いよ…」
臆病な癖に生意気で、口だけ達者。そんな千秋がこんなのを見て怯えない方が逆におかしいだろう。ただ、ひとつだけバラトは勘違いをしていた。千秋が怯えていたのは、行動ではなく行動している“バラト”だ。誘拐されておいて言うのもなんだが、千秋にとって彼と出会ってからの時間は家族で過ごすよりもずっと濃く重く素晴らしいものだと感じている。そんなバラトが怖かった。どれが彼なんだろう、これが本性？今までは嘘？建前？何を信じれば？腕に顔を埋めた千秋の頭に硬い何かがぶつかる。頭を上げるとその何かはストンと手に落ちてきた。棒つきキャンディだ。
「逃げんな、これが現実だこれが俺だ。お前が見てきた何一つ嘘じゃねぇ。目を反らすなガキ」
「…っ、…う…バラトぉ…」
「それでも食っていい子にしてろクソガキ」
バラトは五人に向き直る。すると指と同じくらいの小さい刃物を出した。五人は悲鳴を出すことも許されず掠れた声で顔がぐしゃぐしゃになるほど泣く。バラトは順番に押し倒して刺していった。その小さなナイフは人間の使う態度や言葉や暴力に似ていて、一度刺しただけでは死にはしない。だが何度も何度も刺すとやがて死に至る。この世の中はそうやって弱者は淘汰されていくのだ。壁にもたれ掛かって一生懸命呼吸をする観菜の首をかすってナイフが刺さる。
「俺は残念で仕方がない。お前ら美術の授業の評価酷いんだろうな」
「いや、だ…！しにたくない…！」
「人殺しがよく言うぜ。お前には同情しかないよ。可哀想だから……俺の最高の作品のひとつにしてやる」
勢いよく振りかぶった血のついたナイフは、観菜の心臓に突き刺さり、更に右に回転する。絶望の表情を浮かべて動かなくなった五人を見て、バラトは何を考えているのだろう。バラトは血濡れたナイフを手にただ突っ立っていた。千秋はその後ろ姿を見て、ふと彼の雰囲気が変わったことに気がついた。いつものバラトだ。バラトは水溜まりのように流れ出た血液をどこからか取り出した小さな筆に付け、五人がもたれ掛かっている壁に「Go to hell」の文字と首をはねた子供の絵、サインを書いた。
先程まで青い空を見せていたのに、今では見上げるほどに曇天だ。それが何だか今の自分の混乱した気分を表しているようで滑稽に見える。バラトは千秋を見るとぽつりと呟いた。千秋はその言葉に目を見開く。
「これでお別れだ」
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くろせ(プロフ) - 漣さん» ほんとですね！誤字報告ありがとうございます！訂正致します！ (2019年4月2日 17時) (
レス) id: 09d294978c (このIDを非表示/違反報告)
漣(プロフ) - いつも更新楽しみにしている者です。42話の｢ステラは別の本物と思われるダイヤモンドを取りだし、そのまま逃げ出した。｣という文章なのですが、デウス君ではないでしょうか？勘違いでしたらすみません！コメント失礼しました。 (2019年4月2日 17時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)
飴ん子(プロフ) - くろせさん» ああ、そうでしたか。すみません！！！ 了解です、その機会があれば、またコメントします。バラトニキと千秋ちゃんがすこなのでお気に入りに登録します。改めて失礼しました。 (2019年4月1日 14時) (レス) id: 1a98819731 (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 飴ん子さん» すみません、今はキャラクターは募集しておりません…。また続編とかで募集すると思うので、その時までお待ちくださいませ！ (2019年4月1日 13時) (レス) id: 09d294978c (このIDを非表示/違反報告)
飴ん子(プロフ) - 素敵な一次創作ですね…！バラトさんすこ。(唐突) この素敵な企画に是非ともキャラクター提供したいのですが、どうでしょうか？ (2019年4月1日 11時) (レス) id: 1a98819731 (このIDを非表示/違反報告)
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