■ 第一章 少女誘拐編 ■ ページ1
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昼間の東京で、学校に通っている筈の少女が人混みの中を掻き分けて走る。その呼吸は荒く今にも倒れそうなほど額には汗を滲ませていた。頭の中では先程の光景がフラッシュバックする。目の前に倒れた血を流している人。自分をとり囲む同じ制服を着た人間たち。遠くから聞こえるサイレンの音。自分を指差す人差し指。その時放たれた声がいつまでたっても頭から離れない。少女は振り切るように手足を前へ動かした。
“人殺し! 人殺しだ!”
「はぁッ…はぁ」
“警察呼んで!”
「違うっ、違う違う…!」
“なぁオレらこいつ捕まえたらお手柄なんじゃ…”
「私じゃない!」
思わず声を張り上げると周りの人間達は一斉に少女を見た。「ちが、…違う…」苦し紛れにそうポツリと話してまた少女は駆け出した。すると皆何事もなかったかのように進みだす。そんな光景に少女はただただ人の波を掻き分けて進むしかなかった。
気が付けば来たことのない街に来ていた。空は紺色に染まりそんな中でもネオンは光を消す予定は無いようで車のライトも忙しなく走る。少女は路地裏のゴミ箱の陰に隠れていた。少女は今殺人の容疑を掛けられている。我ながら馬鹿な選択をしたものだ、警察が来てつい逃げてしまった。火事場の馬鹿力と言うのだろうか、ここまで逃げ切れた自分を称えたい。少女はふとビルの頂上を見ると思い付いたように中へと入っていった。
中はデパートだった。少女は鞄から上着を取りだしフードを被ると駆け足で奥へと向かった。関係者以外立ち入り禁止の扉を開けて、階段を淡々と上る。幸い鍵は掛かっておらず、これから自分がすることにデパートの職員たちに罪悪感があってならなかった。屋上の錆びた扉を開けると夜の涼しい風が少女のフードを脱がした。少女は眩しい街明かりに微笑んで、鞄からノートとシャーペンを取り出した。ノートの中から一枚適当に選んで綺麗に破ると、その場に座ってつらつらと文字を書き並べる。
内容はざっくり言うとこうだ。『これから死ぬ。理由は学校での執拗ないじめといじめの主犯殺害事件の容疑。私はやっていない。誰かがそれを証明してくれたら嬉しい。お父さんお母さん、迷惑掛けてごめんなさい。さようなら。 相原 千秋』別れの文章にしては簡潔で、心のこもっていない文章だった。千秋からすればこの世の全ての人間が敵のようなものだったからだ。それを綺麗に折り畳み、靴を脱いで文鎮代わりにすると千秋は腰までしかない柵に寄りかかった。
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くろせ(プロフ) - 漣さん» ほんとですね!誤字報告ありがとうございます!訂正致します! (2019年4月2日 17時) (レス) id: 09d294978c (このIDを非表示/違反報告)
漣(プロフ) - いつも更新楽しみにしている者です。42話の「ステラは別の本物と思われるダイヤモンドを取りだし、そのまま逃げ出した。」という文章なのですが、デウス君ではないでしょうか?勘違いでしたらすみません!コメント失礼しました。 (2019年4月2日 17時) (携帯から) (レス) id: b835eb55b1 (このIDを非表示/違反報告)
飴ん子(プロフ) - くろせさん» ああ、そうでしたか。すみません!!! 了解です、その機会があれば、またコメントします。バラトニキと千秋ちゃんがすこなのでお気に入りに登録します。改めて失礼しました。 (2019年4月1日 14時) (レス) id: 1a98819731 (このIDを非表示/違反報告)
くろせ(プロフ) - 飴ん子さん» すみません、今はキャラクターは募集しておりません…。また続編とかで募集すると思うので、その時までお待ちくださいませ! (2019年4月1日 13時) (レス) id: 09d294978c (このIDを非表示/違反報告)
飴ん子(プロフ) - 素敵な一次創作ですね…!バラトさんすこ。(唐突) この素敵な企画に是非ともキャラクター提供したいのですが、どうでしょうか? (2019年4月1日 11時) (レス) id: 1a98819731 (このIDを非表示/違反報告)
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