No.30 ページ31
タイミングを見計らったかの様にコートのポケットから飛び出した蜘蛛の折り紙が男の口を強引に開かせ、斎槻はその狭い入り口から器用に鉄糸を忍ばせ、奥歯に括り付ける。
手慣れている。男が恐怖に慄きながらもそう悟り、微かに覚える歯茎の違和感に顔を顰める。
「君の事情はどうでも良いだよ。知りたいのは、子供達や内臓が何処で売られているのかについて。話してくれたら、此処から解放してあげても良い」
「生意気なガキが。知らねぇもんは知らねぇよ。俺は金でやとあ゛あ゛あ゛!?」
男が叫ぶと同時に、口の中から鉄糸と共に一本の歯がまるで大物の魚を釣ったかの様な大きな放物線を描いて床に落ちた。
部屋の隅で震えていた少年は「ヒィ!?」と小さく悲鳴を上げながら、更に縮こまる。
「はい、第一大臼歯が取れました。これ虫歯になり掛けてたけど、毎日磨いてる? 病気は大抵歯から来る物が多いからね」
「あ゛っがは……わ、分かった、話す! それで良いんだろ!」
「初めからそうすれば良いのに」
斎槻は再度歯に括ろうとする鉄糸を引っ込めると、男は少し安堵した様子で話し始める。
「あの屋敷から30分の所にある港の倉庫、確か八つ並んでいる内の東から二番目、その中で月に一度闇市が行われてるんだ」
「闇市……」
「そうさ。そこでは子供や内臓、武器とか薬とか色んなもん売ってんのさ……もう良いだろ? 俺が知ってるのはそれぐらいだ、さっさと解放しやがれクソガキ」
「嗚呼、ありがとう。大いに助かったよ。だから、解放してあげる」
──刹那。
ゴトリと男の首が落ちた。断面からは噴水の様に血が吹き出し、斎槻の仕立ての良い服を鮮血で染めていく。彼の手には少し歪に曲げられた鉄糸は、真っ赤な真珠で飾り付けられていた。
「おめでとう、君は見事この世から解放された。いやぁ、本当に羨ましいよ。後、僕今年で26なんだけどね」
斎槻は鉄糸をコートのポケットにしまうと、今度は部屋の隅で小さくなる少年を見る。
そして、静かに近付きながら、太腿のポシェットから鶴の折り紙を一つ取り出す。
「ゆ、許して……」
「許すって何を? 大丈夫、今はまだ殺さないから」
鶴が斎槻の手から離れると、少年の目の前で淡い光を放ちながらホバリングをする。すると、少年は弾かれた様に床に倒れ込み、無防備にも寝てしまった。
幼い顔に出来た涙の跡を拭いながら、斎槻は微笑んだ。
「取り敢えずお腹も空いたし、腹拵えが済んだら首領さんに報告のついでに聞きに行こうか」
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おバカな傀夢(プロフ) - 皆さん、上手くて凄く尊敬します！！え、もう。好きになっても良いですよね。 (2018年6月26日 21時) (
レス) id: 5ff30031ff (このIDを非表示/違反報告)
十二月三十一日(プロフ) - え、ウチの子がとても良い感じのクズ感。そして、ミルクさんとロストアイズさんがクールビューティ過ぎて好きです。 (2018年6月26日 21時) (レス) id: 70aae954fa (このIDを非表示/違反報告)
ドットコム(プロフ) - 自然悦岫さん» 見てみます！ (2018年6月26日 6時) (レス) id: e6a479853a (このIDを非表示/違反報告)
自然悦岫(プロフ) - ドットコムさん» ありがとうございます。モデルにした谷川俊太郎さん作詞の合唱曲、「サーカス�機‘参宗縮粥廚鮴�非YouTubeで聞いてみてください。 (2018年6月25日 22時) (レス) id: 18ee1d3faa (このIDを非表示/違反報告)
ドットコム(プロフ) - ロストアイズさんカッコよ！！！！！！！ (2018年6月25日 22時) (レス) id: e6a479853a (このIDを非表示/違反報告)
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