親戚 ページ25
【まどろみの小部屋】
sideA
ふわふわ、ぽかぽか
現世じゃないみたいな心地良さ
だけどちゃんとそこにある陽だまり
集まった親戚達の賑やかな声が聞こえる
自分も子供たちという括りには入るのだろうけど、生憎同年代はもちろん、年上の姉様方も小さい子供もそれほど興味はないし寧ろ苦手だ
最近は面と向かっても電話であっても彼氏だ何だとしつこい大人も言うまでもなく大嫌いだ
それでも、遠くの声がかすかに聞こえるのは嫌いじゃない
「いつまでそこにおるん」
『まだしばらく』
「甘えんぼさんやな」
すっかり慣れきってしまった煙草の鼻を突く匂い、曇る視界
ここは異性は異性でも叔父さんの膝の上
おじさん、というよりはお兄ちゃんの方が丁度いいだろうか
それだけの距離感である
暖かいけれど眩しくない
西日が入る窓に寄りかかり胡坐をかく影にちょうど顔が隠されているのだ
「今日は暖かいなあ」
『そうだね』
「煙草の匂いうつってまうで」
『いい』
「あっそ」
彼は冷たい返事を返し流れる紫煙に目を戻すが、見上げた先の顔は満更でもなさそうだった
______
side鬱
遠くで賑やかな声がする
一時期はあそこに入れたらとも考えたが、もう合わせる顔もないし
なによりそんな顔もいらない
「お前ってほんまに不思議な奴やな」
『よく言われる』
「行かなくてええん?」
『うるさいもん』
「まあ、せやな。わかるわ」
一時期は長い長い反抗期が成人しても続いたが、
当時から構わず自分に着いてまわる彼女がいるから輪に入る必要もない
付き合ってるって意味やなくて
俺の膝を枕にして寝転がる彼女は姪っ子
まあ姪っ子というよりは妹といった方が近いだろうか
まあそれほど遠くない距離感ということで
ふう、と紫煙を飛ばしても文句を言わないのもいいところだ
彼女の柔らかい髪がズボン越しに擦れた
きゅ、と煙草を持っていない方の手の指をつかまれた
「動けへんねんけど」
『そう?離す?』
「・・・いや、別にええよ」
少し惜し気な顔をして笑う幼い彼女に断る気が失せた
ああ、これだけの時間がただ心地良いと感じるようになったのはいつからだろうか
いつの間にかぽつぽつとした会話も途切れ始め、遂に無言になり、
賑やかだった遠くの声も子供がほとんど寝たのだろうか、大人だけの低い声がかすかに聞こえるだけ
になった
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