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そんなある日のことだった。
いつまで経ってもやってこない少年の声に疑問を持った少女は、村が見える森の入口まで近付くことにした。
村には人だかりができており、よく響く知らない少年の声が聞こえた。
「こいつ、森で人狼と遊んでやがったんや！！！」
どうやら、少年が少女と遊んでいるところを見られてしまったらしい。
殺せ殺せと喚く観衆に怒った少女は、人の群れに飛び込んだ。
そこには、驚きの光景が。
赤の上に横たわる、一人のニンゲン。
周りの叫び声も無視して少年を背負った少女は、急いで遠く離れた森の奥へと避難した。
できるだけ揺らさないように、刺激を与えないように。
ゆっくりと止血をしながら、ポロポロと少女は涙を流す。
どれくらいの時間が過ぎただろう。
少女がうとうとしていた時に、少年の声が聞こえた。
少年が、目を覚ましたのだ。
『うつくん！』
少女は飛びかかりそうになるのを堪え、身を乗り出し、少年の様子を伺った。
「Aちゃん・・・？」
今にも息絶えそうな少年は、少女を見ながら言葉を紡ぐ。
最初で最後の願い、とでも言うように。
「俺は、もうあかん・・・」
力強く、真剣な真っ直ぐとした瞳で。
「やからせめて俺を食べてくれへんか」
少年は、少女に"ヒトならざる者"として、仲間と共に生きて欲しかった。
もう、一人で寂しい思いをさせたくなかった。
『でも、わたし、うつくんと離れたくない』
しかし少女は、少年と遊んでいたかった。
────それが叶わないと、脳では理解しながらも。
「俺を食べてくれたら、ずっと一緒にいられるで。やから、お願いや。」
「Aちゃん。大好きやで───。」
最後の力で少女に言葉を届けた少年の手は、力なく地に近付いていく。
『あのねうつくん、わたしもうつくんのこと、大好きだよ』
少年の手を受け止め包み込んだ小さな手は、雫を、嗚咽を響かせる。
それを隠すようにざわざわと揺れる森の木々は、嫌に記憶に残っていた。
森の奥でまた一人、新たな人狼が生まれた。
小さなヒトは、こうして人狼になったのだ。
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