後輩と留年生 ｰ 都はなれ ページ29
【先輩、日曜日って空いてますか？】
「A先輩」
私の名前が響いた瞬間に、教室の中がしんと静かになる。
『どうしたの？』
私は声が震えないように聞き返す。私を呼んだ彼は見覚えのある運動靴入れを差し出す。
「これ、コネシマさんが先輩に渡して欲しいって」
『あ、ありがとう』
そうだ、シッマに貸したんだった。
そう思いながら私は袋の口を開ける。中には私の運動靴とコンビニの袋に入ったお菓子。それから半分に折りたたまれた紙。
紙を取り出すとそれは現文の小テスト。寝ていたんだろうか、点数は見なかった事にしよう。ぺらりと紙をひっくり返すと『すまん、助かった！今度なんか奢るわ！』の文字。それは間違いなくシッマのもので。
くすり、と笑うと目の前にいた彼がまた「先輩」と言う。
『…どうしたの？』
「あと、先生が今日の放課後に教員室に、との事です」
わかった、と返事をすると彼は去っていく。
彼は私の隣の席の子だ。確か、みんなからはショッピと呼ばれていた。
生徒会のメンバーで、サッカー部所属。今年で2年生。先ほど話に上がったシッマは今年3年生。そして私はシッマと同年入学。
つまり要するに、私は留年生なのだ。理由は、理系科目がからっきしだめだったから。
自宅に届いた原級伝達の紙、知り合いの居ない教室に足を踏み込んだ時の静けさ。もう思い出したくもない。
シッマや鬱、シャオちゃんやゾムは相変わらず良くしてくれるが、この教室では私は完全に浮いている。
未だに私はみんなから先輩呼びだし、まず話をする事も少ない。
先ほどのショッピくんは色々と世話を焼いてくれるが、それはきっとシッマが同じサッカー部である彼にAを頼む、とでも言ったのだろう。そうでなければ、きっと私の世話なんか焼かない。
こんな面倒な留年生の世話なんて。
今日は3年生は校外模擬試験を受けるらしく、シッマや鬱、シャオちゃんやゾムから「今日は一緒に飯食われへん」「学食で美味しいもん食いや」「何食うたか教えてな！」と連絡が来ていた。
私は財布を片手に学食へと歩く。
「あ」
『あ、』
食券機で会ったのはショッピくんだった。
「どうも」
『…こんにちは』
お互いにお辞儀をして、私は食券機を覗き込む。今日の日替わりランチはオムライスらしい。うん、美味しそう。
先に並んでいたショッピくんがお金を入れる。押したのはオムライスのボタン。
『あ』
彼が押したボタンは、目の前で「売り切れ」の表示になった。
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瀉天 - 先輩後輩ってオレンジ？ (2020年6月21日 13時) (
レス) id: 55ffdc0025 (このIDを非表示/違反報告)
ゴミ箱 - めちゃめちゃ良かったです！沢山の作者さん、主催者さん、ありがとうございました！ (2020年5月18日 8時) (レス) id: 94cbebf757 (このIDを非表示/違反報告)
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