色々なknさん企画【w.r.w.r.d!】 (ページ36)

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軍幹部とスパイ‐マーシャページ36

【騙されていたのはどっち？】

静まり返った部屋の中、パソコンの画面だけが忙しなく移り変わる。

目が眩むほどの文字の羅列に、私はそっと目を閉じた。

思えばあっけない仕事だった。

軍の入隊試験を受けて好成績を残し、幹部に私の存在を印象づけて。
軍に入隊したあとは、明るく優しいキャラを演じて彼らの気を引く。

親密な仲になり幹部に昇格されれば機密情報などあってないようなもので、私はそれらをいとも簡単に盗んでみせた。

膨大な情報の詰め込まれたUSBを手のひらで弄びながらパソコンの処理が終わるのをひたすら待ち続ける。

あとはこのデータを母国に持ち帰って、報告を終えて。
そうすれば、全てが終わるはずだった。

…なのに、なぜこんなに私の心は痛いのだろう。

『……彼らはただのターゲット。別に私の仲間なんかじゃない。…わかっているんだけどなぁ…』

眩しく弾けるような笑顔や、弾むような楽しげな声色が頭にこびりついて離れない。
ぴたりと動きをとめたパソコンをみやりながら、私は小さくため息をついた。

『………ごめんね、みんな』

パソコンの電源をしっかりと落とす。
内ポケットの中にUSBをしまうと、私は小さめの荷物を肩に担いだ。

こことはもうお別れだ。
楽しかった日常も、心躍るような交流も、全てがなかったことになる。

明日からはお互いが敵同士。
次に会うのは戦場か。

億劫な気持ちに鞭を打ち、私は静かに扉を開けた。

「―――何しとんねん」

☆*。