色々なknさん企画【w.r.w.r.d!】 (ページ11)

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会社の同僚-桜下人ページ11

【北風と太陽】
冷たい人だとか心がないとかよく言われる。たしかにそう言われればそうなのかもしれない。笑ったことなんて早々ないし。淡々とした話し方だし。真面目で冗談が伝わらないし。確かに冷たいと思う。だが別にそこまで悪いことだとは思っていない。真面目なことの何がいけないんだろうか。笑わないことの何がいけないんだろうか。
「なに考えとるん？」
「急に話しかけてこないで。」
「ええやん同僚やろ？」
「だから？」
「相変わらず冷たいなあ。」
「そう？」
このアホみたいな人が同僚。仲はいいのか悪いのか分からないけどまあいい方なのだろう。
「で、コネシマは仕事終わったの？」
「いやあ…それがなあ…」
「…私に構っている暇があるなら早く終わらせなさい。」
「助けてくださいよ姉さん。」
「姉さん言うな。…仕方ないな。」
こいつが助けて欲しいと言ったらしょうがないと手伝ってしまう私は正直甘いと思う。それでもどうしても手伝ってしまうのだ。
「チワワみたいだから…？」
「誰がチワワじゃ！」
「お前。」
「チワワちゃうわ！」
こんな下らない会話をしながら作業に移る。全く、こいつのせいで仕事が増えたというのに呑気にしやがって。
…嫌な気はそんなにないがな。

北風と太陽。
小さいころ見た物語で未だに覚えているものの一つだ。冷たく強い北風ではなく温かく優しい太陽が勝ったというのが当時の私にはかなり強く残っていて、優しさって大事なのよって母に言われた。でもいつでも優しいことが正義とは言えない。
優しくした結果漬け込まれては意味がない。
優しくした結果嫌がられても意味がない。

でも冷たくすればいい訳でないことも分かっている。
冷たくした結果崩れてしまっては意味がない。
冷たくした結果嫌われたら意味がない。

世の中は複雑にできている。どちらか一方ではダメなようにできている。私にはどうすればいいかまだよく分からない。私ができることはただ明日コネシマが遅刻しないことを祈るのみ。…いや残業が増えないように祈ることもできるな。
どうか定時で帰れますように。飲み会とかありませんように。

その願いは叶わなかった。