ユウジを独り占めする話 ページ20
ユウくんは小春ちゃんと仲が良い
そりゃあ「ラブルス」なんて言われているのだから、当然仲は良いのかもしれないけれど。
だけど、小さい頃から一緒にいた私の方がユウくんのことを理解している筈なんだ。
「…ユウくん。ボタン、外れちゃった」
「なんや、またか？」
ごめんね、と弱々しく言えば、ユウくんは困ったような笑顔を向ける。それでも優しく「これも俺の仕事の一部や。気にすんな」なんて言葉を掛けてくれるから、私は君離れが出来ないの。
「ほんまAは、俺が居らんと何も出来へんなあ」
ユウくんは慣れた手つきで、私のカーディガンのボタンを縫っていく。昔から私の物を直してくれていたその手際の良さは、小春ちゃんへの小道具を作り始めた所為でさらに磨きが掛かっていた。
なんだか、遠い人のように感じる。私はまだ、手の掛かる子どもでいなきゃ。
「………やだ」
「ん？」
「やだ、ユウくんやだ。何処にも行かないで、お願い」
抑えきれなかった感情が、ぼろぼろと出てくる。涙が溢れて止まらない。何のことかさっぱりなユウくんは、縫う手を止めて心配そうに私の顔を覗き込む。涙を零しながら縋るように見つめれば、心配していた表情は哀しそうに歪んでいた。
面倒な幼馴染みでごめんね、そう謝りたかった。でも、人の気持ちも理解出来ないような子どもでいたい。まだ自立はしたくない。もう少しだけ君に甘やかされて、いたい。
我が儘なお姫様には、面倒見の良い、優しい王子様がお似合いだから。
「……はは。お前から離れたら、誰が世話するんや」
必死に笑顔を作って、優しい声で私を安心させてくれる。そうだね、って返す代わりに、強く抱き締めた。何処にも行かせないように、縛るみたいに。
「相思相愛」。傍から見れば、そう感じる抱擁した図。だけどそこに、幼馴染み以上の愛は無い。君が私のことを恋愛対象として見ていないことは知っていた。ずっと、妹みたいな幼馴染みとして接していたし、ユウくんもそんな風に私を甘やかしてた。
「………好き」
「俺もや」
その「好き」は、一人の女としての「好き」じゃない。
でもいいの
ユウくんの傍に居られるなら、抱いてる恋心なんて掻き消しちゃって。
私が独り立ち出来るまでは、兄妹のような関係でいようね
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自立する気なんて、さらさら無いけど
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作者名：かもめ | 作成日時：2018年8月6日 22時
