手塚を元気づける話 ページ15
テニスコートのフェンスには、沢山の女の子達。私もその中に混じってテニスを観戦する。
汗を流しながらテニスをしている姿はなんかもうすごい青春している。青春学園だけに。
……………にしても、堅い。堅すぎる。
今試合中の子は皆笑顔で楽しそうなのに、部長の手塚くんだけは一切表情を変えず、お堅い表情でどんどんポイントを入れる。
それでも手塚ファンの女の子は、そんな姿も「格好良い！」とさらに声援を送る。
少し経って、手塚くんが部員を集めて片付けを始め、部活終了の雰囲気だったので私も鞄を取りに行く。
テニスコートに戻って来れば、続々と部室から出る部員達。
そろそろ皆帰ったかな、とそっと部室を覗いてみれば、そこには先程まで無表情でテニスをしていた手塚くんが。
「手塚くん、部活お疲れ様」
「……ああ、A。まだ残っていたのか」
彼女だし、一緒に帰りたかったから、と言うと、手塚くんは少しだけ笑みをこぼした。
いつもそんな表情してればいいのに、と思ったけど、その表情を見れるのは私だけ、という特別感もあったので口には出さなかった。
「………A、俺は部員達からどう思われているのだろうか」
「いきなりどうしたの、手塚くん」
突然話しかけてきたと思ったら、………まさか、相談？
別に、相談してきたことが珍しい訳じゃ無いんだけど、こんな相談を手塚くんからされるのが珍しいと思っただけで、私はなんて返せばいいのか思いつかなかった。
「その、俺は常に無表情で、部活のメニューもかなり厳しくしている。自分でもわかっているんだ、堅い、ということが。
それが、無愛想、と捉えられ、部員達から嫌われていたりするのだろうか？」
「………嗚呼、」
そういうことだったのか。まさか手塚くんは、そのことでずっと悩んでいたのかな。無表情で落ち込んでいる手塚くんを見て、気付けなかった自分を殴りたい。
「そんなことない！！確かに手塚くんは無表情だから無愛想って言われそうだけど！！でもね、テニス部員達がそういうことを言ってた所、見たことない！！……………多分！」
よく考えたら私テニス部の人達のことあんまり知らなかった。こんなこと言える立場じゃなかったな……
恐る恐る手塚くんを見てみると、驚いた表情をしていたけれど、もう落ち込んではいなかった。
「………ありがとう、A。少しだけ、気分が晴れた」
そう言った手塚くんの表情は、私からしたら文句なしの100点満点スマイルであった。
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作者名：かもめ | 作成日時：2018年8月6日 22時
