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「僕アイス食べたいんですよねー」
「アイスは早いって。まだ四月だっての」
ウィトと二人で校門に向かって、中庭を並んで歩く。ふわりとした風が桜の花びらを散らして、桃色が視界の端で揺れている。
大きな校門の目の前まで来たとき、校門の中央で立ち往生している生徒がいるのが見えた。
「どうしたんでしょう」
「さあ? 新入生か?」
二人の声に気が付いたのか、金髪の生徒が躊躇う様子を見せてから振り返った。抱えているうさぎのぬいぐるみを持つ腕に力が入るのがわかる。
「えーっと、別に外出届とか出さなくても校内から出ても良いんだぜ?」
「……えっと、その」
「どうしたんですか?」
「……迎え、が」
話を聞くとその生徒は家から学校に通っているらしい。
「そういえば、一人だけ特例で家から通学してるって聞いたことが……。えっと、榊原タツキ?」
「あ、うん」
「榊原って、あの榊原ですか!?」
「でも、榊原タツキって確か……三年じゃ?」
「多分、想像してる榊原であってる……かな。それと僕、普通に三年生だよ?」
「え、まじですか!? ……同い年だと思った」
ウィトが再び声を上げる。大きな声にタツキの肩が跳ねた。
「二人は二年生、かな」
「いや、俺は二年だけど、こいつは一年」
「そうなんですよー。それで、榊原先輩はなんでこんなとこにいるんですか?」
榊原という言いにくい名前にウィトは舌を縺れさせた。それにタツキは苦笑いを浮かべる。
「タツキで良いよ。……えっと、迎えの車が来るはずなんだけど。時間が過ぎてもこなくって」
「へえ、それは困りましたね」
先輩だとわかったため、Aも敬語にあらためる。しかし、それにまたタツキは苦笑いした。
「ため口で良いよ。僕、そういうの苦手なんだ」
「あー、うん、わかった。電車では帰れない?」
「距離的には問題無いと思うんだけど……。電車詳しくなくって……基本移動は車だし」
辺りに車のタイヤが地面に擦れる甲高い音が響きわたる。その後に複数のバタバタという足音も。
「坊ちゃん!」
「あ、遅いよおー、もうっ」
「申し訳ございませんっ!」
そこには四人の青いワンピースに白いエプロン姿の女の人がいた。みんな特徴てきな桃色の髪の毛をしている。
「今日、運転手の方が有給だと忘れていて!」
タツキはあっという間にメイド服の四人に囲まれて車に押し込まれていった。後には呆然と立ちつくすAと首を傾げるウィトだけが残っている。
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