【斉木楠雄のΨ難】僕の幼馴染はマトモ…なはずだ。 (ページ38)

今日:5 hit、昨日:4 hit、合計:92,715 hit

37話ページ38

斉木楠雄side

Aさんの撮影が終わり、健人さんと梨子さんは別の仕事があるらしく、僕とAさんは家に帰る事に。

『はあ〜緊張したぁ…』
楠雄《そんな風には見えなかったが。ほとんど1発OKだったじゃないか。》
『まあね〜…』

いつも通り…か。
本当に何も感じてないみたいだな。

『でもごめんね楠雄くん。巻き込んじゃって…』
楠雄《何故謝る？僕は自分から行きたいと言ったのに。》
『うん…でも、こうなると思わなくて…』

全く、Aさんはいらない責任を感じすぎだ。

『それに父さんと母さんに色々言われたでしょ…？すごく申し訳なくて…』
楠雄《全部Aさんのせいじゃないから謝るな。》

僕はそう言ってAさんの頭を軽く叩いた。

『…演技と言えど、キスもしてごめんね…』
楠雄《アレは仕方ないだろ。》

監督は元々あの台本の通りに進めようとして、たまたま被害者役の人が骨折して、たまたま来た僕が代理で出ただけだ。

『…本当に、ごめん。』

僕から目線を逸らしそう言ったAさんの耳はとても真っ赤だった。
その姿にとても愛おしさを感じる。
真っ赤な耳に触れたくなるのを抑え、僕は大きく溜息を吐いた。

『え、何今の溜息。』
楠雄《耳真っ赤だぞ。》
『は、恥ずかしいなぁもう！っくちゅ！』
楠雄《鼻も真っ赤だな、全く。》

僕はカバンからマフラーを取り出し、Aさんに巻く。

『…ありがとう、楠雄くん！』

変にギクシャクするより、いつも通りの方がいいな。

楠雄《コーヒーゼリー1個。》
『仕方がないなぁ！』

ーーーーーーーーー

後日。

『楠雄くん、はい。』

Aさんに茶色い封筒を渡された。
中身はお金だった。

楠雄《…これは？何だこの大金は？》
『この前のドラマの撮影のギャラだって。』
楠雄《こんなに貰えるのか！？》
『普通はそんなに貰えないよ。ただ今回は急だったのに役を引き受けてくれたお礼もプラスされてる。』
楠雄《そうか…》

にしても…このお金で一体どれくらいのコーヒーゼリーが買えるだろうか…

『(とか考えてそうだなぁ、楠雄くん。)』

大正解だよAさん。
いつから超能力者になったんだ全く…

『楠雄くん！買い物行こっか！』
楠雄《ああ。コーヒーゼリー…》
『マカロンも買いに行こ〜！』

…僕達はこれ以上の関係にはなれない。
何となくわかっていたが、僕は改めてそう思った。