【斉木楠雄のΨ難】僕の幼馴染はマトモ…なはずだ。 (ページ36)

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35話ページ36

斉木楠雄side

僕の横でAさんが台本を開く。

『……エッ』

えっ？

『…こ、れ、しなくちゃダメなんですか…？』
監督｢東雲ちゃんのイカれてる姿を最大限に引き出そうと思って！まぁ演技だから！｣
『ふ、フリじゃダメですか…？』
監督｢そこドアップの予定だからフリだとバレちゃうなぁ〜！｣
『そ、うですか…』

何なんだ、全く…
僕はAさんが持ってる台本を見る。

【キスシーン追加】

はい？

『(く、楠雄くんとききききキス！？そんなっ、無理っ！恥ずかしい！！しんじゃう！！)』

しなれては困るな。

梨子｢ふふ、一眼レフ持って来て頂戴。｣
｢え？｣

撮る気だあの人。

健人｢き、キス、だと！？そ、それはダメだ監督！！｣

さすがの父親は止めるか？

健人｢赤ちゃん出来たらどうするんだ！！｣
監督｢は？｣

できねぇよ。

健人｢俺はチューしたら赤ちゃんできるって小さい頃から教えてきたんだ！頼むよ監督！｣
『父さん止めて。それだけで出来ないこともう知ってるから…』
健人｢なっ、一体誰に教わった！？母さんか！？母さんなのか！？｣
『保険の授業で、先生に。』
健人｢…そ、そうか…そうだよな……｣

なんで泣きそうなんだあの人は。

『…楠雄くんごめんね…フリはダメっぽいから本当にする事になるけど…』
楠雄《大丈夫だ。》
『せめて綺麗な女優さんとかだったら楠雄くん不快にならなくて済んだのになぁ…』

…それはAさんとだと僕が不快みたいに思われているのか？

楠雄《そんな事ない。僕は相手がAさんで心底安心してる。》
『…そ、う？なら良かった。』
楠雄《…逆に不快なのはAさんなんじゃないか？》
『え？何で？』

何でって…

『私も楠雄くんで安心してる。知らない人にキスするより親しい人の方がしやすいし。何より、楠雄くんだから後々変な雰囲気にならずに済むと思って！』

…僕のこと、全く意識してないんだな。
少し胸の奥がズキリと痛んだ。

監督｢本番行くよー！｣
『はい！楠雄くん位置着いたら私が眼鏡外すから、絶対目開けちゃダメだよ。』
楠雄《言われなくても分かってる。》

僕は指定された椅子に座り、椅子ごと体と足を縄で結ばれる。

監督｢じゃあ眼鏡外してもらっていいかな？｣
『はーい。楠雄くん外すよ？』
楠雄《ああ。》

目を閉じると眼鏡を外される。

監督｢じゃあ行くよ。3、2、1…｣