１０． ページ10
普段そんなに話さないんだけどね。
「初兎っ…くん…話、聞い…てくれる？」
涙で視界が歪んでいるのがわかる。
「もちろん。…あ、移動しとく？」
うん、と僕がうなずくと、手を差し伸べてくれた初兎くん。
その手を取って、２人で屋上に続いている階段へ。
「…で、どしたん？全部話してええよ。」
初兎くんの紫色の瞳が、僕を捉える。
「っ…あのね？よく、わからないんだけどっ…すごい辛くて…顔を真っすぐ上げようとしても、すたすら歩こうとしても…全部、全部…頑張らないと出来ないのっ…」
僕の心の中で何かが切れて、一気に思いが溢れ出す。
途中、言葉に詰まりながら言う僕。
初兎くんは怒ったりしないで、うんうん、と頷いてくれていた。
「それにねっ…？頑張ろうって、思っても…電車の中っ、で、泣いちゃって…すごい、すごいしんどくて…ずーっと、何か押さえつけられる、みたいにっ…痛いの…」
「全部、全部っ…何にも、わかんないの…！」
顔を上げると、僕の目から涙がぼたぼた零れ落ちる。
頬を伝った涙は、僕のズボンに染みを作っていく。
…不意に、暖かいものに包まれた。
「そっか。」
初兎くんがそう言って、僕のことをぎゅっと抱きしめる。
「っ…うぁっ、しょ、くんっ…」
涙が止まらず、子供のようにひたすらに泣きじゃくる。
わーわー、ずっと泣いてしまう。
「大丈夫やで…」
そんな僕を抱きしめたまま、初兎くんは背中を撫でてくれて。
「なぁいむくん。」
「な、ぁに？」
顔を上げると、優しい顔をした初兎くんが目に入る。
初兎くんは、さっきみたいな優しい声で、僕に言ってくれた。
「…生きてるだけで、偉いやん。」
って。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うゆ - 初コメ失礼します。この作品ほんっと大好きです…！いむくんの気持ちが今の自分と重なり、初兎ちゃんが優しすぎてがちで泣きましたT^Tほんと人間生きてるだけでめっちゃ偉いです！！素敵な作品に出会えてよかったです！ (12月4日 22時) (
レス) @page11 id: e3989c5930 (このIDを非表示/違反報告)
Comet@すいでい(プロフ) - ゆな@すいでいさん» コメントくれるだけで嬉しいんだ！！（必死）カプっていうかこれ公式ペアだｙ(((黙ろうか？ 私明るい系向いてないってことがわかったから←暗い系ならいくらでも作れる…大好き発言ありがと… (2023年3月3日 19時) (レス) id: b9234993da (このIDを非表示/違反報告)
ゆな@すいでい(プロフ) - うぇぇ泣いた…コメントおそくなっちゃってごめんね…このカプめっちゃ好きなの、しかも暗い系。もう尊敬しか浮かばない…だいすき… (2023年3月3日 14時) (レス) @page11 id: 241dca6ebe (このIDを非表示/違反報告)
Comet@すいでい(プロフ) - 影山KEIさん» この曲、傘村トータさんが作ったみたいですね。私も好きな曲です…更新止まり気味ですが頑張りますね！ (2023年1月20日 15時) (レス) id: c4eb4d305b (このIDを非表示/違反報告)
影山KEI - この曲を書いた人もですけど、これ作った作者さんも神ですよね。。めっちゃなく (2023年1月20日 13時) (レス) @page4 id: d82d2213ef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Comet＠すいでい | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/irisuidei13/
作成日時：2023年1月4日 15時
