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彼にとっての春 ページ16
YG side
暖かい風が吹く季節になった
移動車の窓から見える街並みはすっかり春色に色づいて、行き交う人たちはざわめいている
こんな季節は
嫌ってほどあいつのことを思い出す
あれは、3年前
付き合っていたAと喧嘩した
あんな風に言い合うことなんて、今までなかった
今までなら、ちょっと一呼吸置いて"ごめん。悪かった。"そう言えた
でもあの時そう言えなくて、あれが最後になった
その後すぐに出たAの熱愛報道
Aと仲良さそうに歩く俳優さんは、スラッと背が高くて、爽やかで、優しそうで
Aとお似合いだと思った
俺なんかよりずっと
あの人に嫉妬していたのかもしれない
自分に自信がなかったのかもしれない
キラキラ輝いてるAが、俺が想う分と同じだけ
俺を想ってくれていると信じられなかった
俺も熱愛報道されてた時期で、お互い会うことなんてできなくて
結局、謝ることも、仲直りも、何もできないまま
俺は、"俺たち"を終わらせてしまった
あんなに好きだったのに
あんなに大切だったのに
なんで俺はあの時、Aを手放してしまったんだろう
今になってもなお
記憶の中のAは俺から出て行ってはくれない
まるで
"離れたくない"と言っているみたいに
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作者名：ミンの甘露煮
| 作成日時：2023年4月23日 13時
