バンタンのマンネは年齢詐称【YG】 (ページ2)

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あれは突然のことだった。

無駄に良い声を持った私は、通信大学で勉強しながらコンビニのバイトとガイドボーカル、作成したビートを売ったりして家計を支えていた。

うちは母ひとり子ひとり

"大学だけは出なさい"

それが母の口癖だった。
母は高校までしか出ておらず、学歴社会でとても苦労したらしい。
だけど、経済状態が良くない我が家は、昼は働かないと生活できない。だから、通信大学という選択肢しか無かったが、母の言葉を守って勉強だけはした。

卒業したら就職して、苦労した母と美味しいものを食べに行こう。旅行だって行こう。

そう決めていたのに。

その母が死んだ。

通勤途中の交通事故だった。

どうでも良くなった。

勉強も、人生も。

私は母が大好きだった。

弱音を吐かず、いつも笑って、苦しくても前に進む母が誇りだった。

大切な人を失った今、私に生きる希望なんてなかった。

葬儀を終え数日。

何もせず、何も食べず過ごした。

ただ涙が溢れるばかりで、頭の中は母の笑顔や、母の声で埋め尽くされていた。

そんな時届いたのは、部屋の契約更新書類

更新料も、毎月の家賃でさえも、私1人で払える訳なかった

母の遺骨をペンダントに入れふらふらと海まで来ていた。

所持品はスマホだけ。

母が好きだった海。

今は暗くてよく見えないが、いつもは真っ青でキラキラと輝いている。

空から、白い雪が落ちてきた

あぁ、ここには母が好きなものばかりある

母は雪も好きだった。

母が好きだった曲を口ずさみ

母と一緒に写った写真をみながら
海へと消えようとしたとき

私の腕を掴んだその手は

私をこの世に引きとめたのだった。