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北斗side
俺の家は普通の家庭とは違う。
中学の頃に両親を事故でなくしてから六つ上の兄と二人暮し。
施設に行く選択もあったが、当時の俺のわがままで、兄は大学を辞め、働いた。
けどあいつは生まれつき体が弱かった。
もうほぼ治ることはないと医者に言われてしまうほどに重い喘息を持っていて、昔は入退院を繰り返していた。
あいつの病気が簡単に治るものじゃない、そんなの俺がいちばんわかっていたから、
だからこそ、体にムチを打って薬で騙し騙し発作を抑えて、それでも無茶をして働く兄のことが俺は
大っ嫌いだった。
それが、俺のためだと知っていたから。
「けほけほっ!」
ほら、また。
薄い壁一枚で遮られた隣の部屋からは今日も苦しそうな咳が聞こえる。
その音はいつだって昔の記憶を鮮明に引き出す。
母さんに連れられて病院に行くと、真っ白なベッドに同化してしまいそうなほど白くて細い兄がたくさん管をつけている。
酸素を送られていながらもげほげほとなんどもくるしそうに咳をして、血の混じった痰を吐き出す。
そんな姿を見て俺は兄がこのまま死んじゃうんじゃないか、と怖くて怖くてなんどもあいつに縋って泣いたのを覚えている。
ずっと辛くて、痛くて、苦しい思いしているはずなのに、
それでもあいつは笑ったんだ。
俺の頭を撫でて、大丈夫だからね、って。
すぐお家に帰るからね、って。
そんな兄の姿を思い出すのが嫌で、勉強机に向かうふりをして、イヤホンの音量を上げた。
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ゆん - 更新楽しみにしています (2月25日 14時) (レス) id: 1f3daddeea (このIDを非表示/違反報告)
なる - 更新うれしいです!ありがとうございます! (11月15日 20時) (レス) @page26 id: b593d6990a (このIDを非表示/違反報告)
yun - 気長に楽しみにお待ちしております!いつも更新ありがとうございます :) (8月12日 11時) (レス) id: 71f21611c1 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - のあさん» しばらく更新は厳しいですが閲覧は0815で可能です!よろしくお願いします🥹 (7月28日 22時) (レス) @page18 id: bcb8e1b2ca (このIDを非表示/違反報告)
のあ - 主様の作品全部大好きです♡!良ければなんですけど(がんばる君に。)のパスワードを教えていただけませんか?お願いします!! (7月28日 22時) (レス) id: c5462c43aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凛 | 作成日時:2023年7月6日 23時