キミの好きなもの。 (ページ3)

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『ん…っ、』

「あ、目覚めた？」

『は…っ、おれ、』

何度か瞬きをして体を起こした彼。

あれからしばらく眠り続けて、もう時刻は夕方四時。

「コンビニの前で倒れたんだよ。ごめんな、勝手に連れてきて。」

『ぁ、ごめんなさ、迷惑、お掛けしました…、』

申し訳なさそうな顔をして頭を下げた。

「いいって。あんたのこと、なんか放っておけないし…、」

『ぇ、…、と。田中さん、ありがとう、ございます。』

「なんで俺の名前。」

『あ、ほらここに、いつもつけてたでしょ？』

そう言って自分の胸当たりを指さす彼。

そっか、制服の名札、見ててくれてたんだ。

自分のことを覚えていないのかもと思っていたからなんとなく嬉しくて、表情が緩んだ。

『おれ、大我っていいます、京本大我。』

京本大我、

顔によく合う綺麗な名前。

「樹、樹でいいよ。」

『樹、今日はありがとう。こんど改めてお礼させて』

「いいよ、そんなの。」

お互いの名前を初めて知ってちゃんと話した初めての日。

さっき見た薬のこと、聞いてみようとしたけどなんとなく触れることが出来なくて。

ちょっと風邪こじらしたくらいだよな、きっと。

この時はまだ軽い気持ちで考えていた。