キミの好きなもの。 (ページ1)

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樹side

俺の人生は平凡でくだらなくて、自分から見ても味気ないものだ。

22歳、大学も通わずフリーター4年目。

無駄にいいこの顔でただひらすらに女の子と遊んで。

そして普段近所のコンビニでバイト。

「っしゃいませー、…ぁ、」

あ、ひとつだけ。
こんな俺にも一つだけ楽しみがあった。

それは毎日バイト先のコンビニに寄るこの美青年。

一般人とは思えないほどに端正な顔立ちにサラサラの金髪。

俺も金に近い色だけど、俺なんかとは違って高貴な雰囲気を纏っていてつい目で追ってしまう。

とはいっても俺と彼はただのバイトと客。

突然話しかけたりなんかしたら怪しまれてもうここに来づらくなってしまうかも知れない。

そう思うと話しかけることは出来なかった。

お茶と小さなおにぎりをひとつ、

それだけを持って彼はレジにやってきた。

「360円になります…、」

高そうな財布から小銭を出す彼はなんだか絵になっていて、ぼーっとみているとそこには気づけばもうお金は出されていて不思議そうな顔をして見られていた。

「あ、すいませ、」

『ふふ、今年は暑いですからね…。熱中症、気をつけてください。』

夏バテだと思われたのだろうか、

労いの言葉をかけられて彼は店を後にした。

「きれいな声…、」

そういえば初めて聞いた。
少し鼻がかかった、意外と低い声。

そんな彼の後ろ姿をみながら、胸がじわりと熱くなっているのがわかった。