185 ページ36
なんというかあの気取った顔が、つんと尖った顎を思いっきりへし折ってやりたい気分だったのだ。
「(どうせ、最低だって思われてるのなら…)」
Aは思いついたら最後、するりと当たり前のように口にしていた。
「ねえ、ハリー私貴方の誘いを受けるわ。」
ハリーの驚いた声をやわらかく首を振ることで遮ったA。
「そ、そっか…ありがとう…」
部屋に踏み込みかけた足をハリーが、少し元に戻しかけたのはきっと気のせいじゃない。
「(ごめんね、ハリー)」
心の中でそう切なげに謝ったAは、ハリーのために飛び切り美しく着飾ってやろうと、心に決めた。
あの青白い顔をどうあっても裏切ってやりたい。
そんな暗い気持ちを抱えながら、クリスマスは目の前に近づいていた。
クリスマス当日、Aは一週回ってとても清清しい気持ちになっていた。
ローズからはひたすら謝られたが、Aにはどうでも良かった。
「彼の本性が分かったからいいのよ。
あんなひどい人だって分かったんだから。」
Aはお誘いの手紙を回りに見せ付けられたことや、ドラコのひどい言葉のことを怒っているのではなかった。
ただ二人の共通すべき秘密のように話していたあの話を、託した記憶の内容を言われたのがたまらなく嫌だったのだ。
最低だ、嫌なやつだ、そう何度も心に言い聞かせて、Aは等身大の鏡を前に自分の姿を確認する。
「(そういえば…マルフォイ家の客室にも似たようなものがあったわね。)」
Aがふと思い出しながら、鏡に触れてみるが何も起こらない。
当然だ、これはあのときの夢とは違うのだから。
着飾ったAは、プラチナのようなアッシュが混じったサテン地のドレスを身にまとっていた。
店員からとても似合うだろうからとおまけでつけてくれた付属品は細めの紐とコサージュの白い花。
紐はウエストラインにあわせ、綺麗な葉のコサージュは髪につけた。
くるっと自分の姿を鏡で確認してから、Aはちらりと音のならないオルゴール箱を見つめた。
中には彼からもらった鷲が刻まれたブローチが入っている。
つけてくれるところを見てみたい。
いつだって自分の主張を隠さずにいえる彼は、Aにその言葉を言うことはなかった。
でもこれを送ってくれるということはそういうことなのだろう。
きらりと意地悪く光ってみせる銀色のブローチの綺麗なこと。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 74人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
イライザ(プロフ) - ベルモットさん» ありがとうございます、コメントをいただけると、本当に励みになります。そうですね、プライドが高いのはレイブンクローの特色ですから(笑) (2019年9月6日 3時) (
レス) id: 546c85bffe (このIDを非表示/違反報告)
ベルモット - 読み続けています。ベルモットです。ハリーポッターシリーズの夢小説は何度も読んでいる身なので自然に興味が出ていました。夢主がプライドが高くて健気だなぁと思いました。 (2019年9月5日 23時) (レス) id: e8970a172e (このIDを非表示/違反報告)
イライザ(プロフ) - うさぎさん» ありがとうございます！まだまだ未熟者ですが是非よろしくお願いします！ (2019年7月19日 12時) (レス) id: 546c85bffe (このIDを非表示/違反報告)
うさぎ(プロフ) - 先程見つけて一気に読んでしまいました！ここまでハマれる作品に久々に出会えて嬉しいですっ！素敵な作品、更新楽しみにしてますね！ (2019年7月19日 9時) (レス) id: ebaf376ead (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ｉｒａｉｚａ | 作者ホームページ：
作成日時：2019年7月18日 15時
