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「人間、特別に私に手を貸す事を許してやろう」
「助けが必要だったらそう言えば良いのに……」
テスは酷い有り様だった。依頼で怪異の退治に向かったのだがどうやら相性が悪かったらしく、満身創痍の状態だった。人間ならばとっくに死んでいる大怪我だ。吸血鬼であるテスは死にはしないが、それでも血を飲まなければ回復もできず動けない程たった。
心配になった犬飼が様子を見に来ていなければ、そのまま夜明けと共に太陽に焼き尽くされてしまっただろう。あるいは怪異になぶり殺しにされていたか。
「血液パックをとって寄越せ」
近くに落ちている鞄の方向を見ながらテスは言う。腕が残っていれば鞄を指差していただろう。
はいはい、と犬飼は近くの茂みに放り捨てられている安物のナップサックを漁る。中には一つだけ血液パックが入っていた。パックは医療用のものであるが、中に入っている血液はやや古いのか黒ずんでいる。
だが犬飼は特に構いもせず、パックを開けてテスの口元に押し付ける。このくらいなら特に問題はないと知っているのだ。テスはごくごくと飲み、それと同時に身体が再生されていく。剥き出しになっていた骨も、引きちぎれた筋肉も、まろびでていた内臓も、柔らかな皮膚に覆われていった。
「悪いな」
「お前な、もうちょっと慎重になった方が良いぞ。そのうち死ぬぞお前」
「そんなわけないだろう」
私は吸血鬼だぞ、
さっさと帰るぞ、と犬飼は未だ倒れているテスに手を差しのべる。
「立てるか？」
「うん」
「てかお前ほぼ全裸じゃん、服は再生できないのか？」
「無理に決まってるだろ」
俺やだよ全裸の不審者と帰るの、と犬飼は言う。テスは無茶を言うな、と返した。言い終えると複数の蝙蝠に分裂し、犬飼の周りに群がったり、頭や肩、服にとまる。
「これで良いか？」
「……全裸よりましだな」
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