【派生作品】怪異達の日常 (ページ7)

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医者を潰して、潰して、朝が来る頃には何もなくなった。病室内の死の香りも、以前より僅かながら弱まった気がした。

　牛崎氏は無事に退院し、吸血鬼は五万円を手に入れた。追加報酬である二万円を手に入れられなかったがいざ五万円を貰うとそれで満足したようで、吸血鬼はご機嫌だった。

　帰った吸血鬼はボロ家でくつろいでいた。ちょうどその時、仲介者の二人は用があったらしく不在で、他のメンバーも仕事などでいなかった。つまり、吸血鬼一人であった。入院していた牛崎氏がお礼を言いに来たのである。吸血鬼は適当に相槌を打って帰ってもらった。

「邪魔をして悪かったな」

　ボロ家を出る牛崎氏の背中に向けて、小さく囁きかける。その声は牛崎氏に届かなかったが、牛崎氏に届けるものではなかったため吸血鬼は気にかけなかった。

「契約は締結された。私はお前の邪魔を、少なくともしばらくはしないよ。金はそこそこ得られたし……同業者の妨害なんて、仕事でなきゃやらない」

　吸血鬼はにっこり笑った。

　吸血鬼は報酬に満足していた。ここしばらくは新しい依頼を受けるつもりもなかった。五万円あればしばらく食い繋げる。

　だから、去る牛崎氏の肩にこびりつく死に関して何も指摘しなかった。

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