【派生作品】怪異達の日常 (ページ13)

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「わんっ！」

　数年の年月は子犬をよく育んでいた。いや、もはや子犬とは呼べない。すっかり大きくなっていたその犬は激しく尻尾を振りながらぺろぺろとテスの頬を舐めていた。

「相変わらずだなぁ」

　犬飼はそれを眺めながら、先程まで犬が遊び散らかしたおもちゃを片付けていた。薄汚れたテニスボール、ぼろぼろになったぬいぐるみ、お気に入りのすりきれた毛布。それらをまとめて、部屋の端に設置された犬用のベッドに置いておく。

「そういや人間、お前そろそろ結婚記念日なんだろう？何か贈り物は用意してやっているのか？」

「当たり前だろ……てか誰だよそれ喋ったやつ」

「女が話してたのを盗み聞きした」

「おいおい」

　軽く首を傾げて誤魔化すテス。犬飼は左手の薬指にはめた指輪を撫でながら、テスにじゃれついている犬の方を見る。

「それにしても、そいつ元気だよなぁ」

「元気すぎるくらいだ。びっくりするほどひっついてきて面倒な事この上ない」

　テスはちょっと待ってろよ、と言いながら、先程犬飼が片付けたテニスボールをとってきた。そのまま軽く放り投げると、犬は嬉しそうに吠えながら口に咥え、テスの元へと持ってくる。その顔はどこか誇らしげだ。

「お前が言うならよっぽどだな」

　犬飼はおかしそうに笑った。