甚爾は私の弟ですが【呪術廻戦】

『No.35』「豹変について」 ページ35

ーー


『壊れていなくて、今よりも良い状態で
　また会えると良いんだけど…』

「呪具だろ？
　そんな大袈裟に言わなくても」

『人の扱いも丁寧に出来ない人が
　呪具扱えると思うかな、私は少なくとも思わない』


そこまで言う事なのか…？


『というか、直哉くんは？』

「置いてきた」

『はぁ！？
　置いてきたぁ！？』


呪具を選び終わった後、
「もうちょいここ見てかん？」って言うから
「別に良いけど、理由は？」って聞いたら
「甚爾くんともうちょい一緒にいたいからに
　決まってるやないか！ 折角数年振りに会えて
　積もり積もった話もある事やし」とか言ってたから
無言で武器庫に鍵して、中に置いて来た。

ただそれだけなのに、そんな怒るか？


『事の重大さに気付こうか
　もうちょっと他人を慮る心を持とうか
　本当に恩知らずな人だね君は
　あれだけ直哉くんが懐いてたのに…』


そういうのは付き纏われてたって言うんじゃねぇの？

そもそも覚えてないし知らないけど。


『これ以上アンタに言っても無駄だね
　ほら、武器庫まで戻るよ
　人に言われる前に気付いて動けよまったく
　…黙ってないで何か言ったら？』

「あ」

『そういう事じゃねーんだよ！』


言うが早いか、姉貴はさっき武器庫の中で取った
アレ(雷磁)とは違う何かでいきなり斬りかかって来た。

ありゃ刀か？

真剣白刃取りの様にというか、真剣白刃取りだった。

真剣白刃取りの様に、真剣白刃取りをした。

ふぅ、刀は折れてねーし手も切れてねー。

姉貴は相当キレてるみたいだが。


「そんなキレなくて良いだろ
　ヒスはモテねーんだぞ」

『は、ヒス？
　そんな事はどうでも良いから武器庫だっての
　手間かけさせないで欲しいよ、大人なんだから
　津美紀ちゃんと恵くんの方がよっぽど良い子やね』


静かに、穏やかに姉貴はキレた。

さっきとは別人の様に、豹変した。

声色は相当低く、京都の方の方言が混じる。

いつもの柔らかさや温かみの
かけらさえ感じ取れない。

凛と冷たい、まるで影の様な静けさを纏い
冷ややかな目でこちらを見る。

そんな姉貴に、あまりの懐かしさに
久しぶりだななんて思った俺はおかしいのだろうか。


ーー

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