甚爾は私の弟ですが【呪術廻戦】

『No.33』「直哉について」 ページ33

ーー


『あっ甚爾
　…と直哉(なおや)くん？』


そんな姉貴の声が聞こえた。

あいつ、ナオヤか。

ナオヤ…分かんねぇ、誰だよそいつ！


「やっぱAちゃんもいたんやね
　甚爾くん、俺がずーっとここで話しかけてんのに
　寝たふりしとんねん」

『え、寝たふりとかそんな馬鹿な事してたの…？
　直哉くんも良く懲りずに話しかけられたね
　起きてあげなよ甚爾』


寝たふりするのはそんな馬鹿な事か？

と思いながら起きる事はしねぇ。


『ね、起きろって言ってんの
　今日来る途中も寝て…るフリしてたじゃん
　何が悲しくて1日何度も弟起こさなきゃいけないの
　流石にこれじゃ直哉くんが可哀想でしょ
　人の心とか持ってない訳？
　恵くんと津美紀ちゃんも泣くよ』


流石に起きた。

人が寝たフリしてる間に勝手な事してんじゃねぇよ。


「甚爾くん！」

「あーーーー 久しぶり…なのか？」


駄目だ、これでも思い出せねぇ。

直毘人の息子で…それしか情報ないし。


『直哉くん、甚爾が覚えてなさげだから
　自己紹介してあげて』

「そう言うなら仕方ないなぁ
　禪院直哉、今は2級術師で次期当主や！
　まぁ、Aちゃんが女じゃなかったら
　当主やったかもしれんとは言われとるけど」

「そうなのか？」

『らしいけど…』


自己紹介聞いた所で思い出せない。

…こんな奴そもそもいたか？


「術式は投写呪法、甚爾くん思い出せた？」

「んー、覚えてねぇ」

『嘘でしょ…』


嘘も何も紛れもない真実だからな。


「まぁそういう事や
　ゆーっくり思い出してな俺の事♡
　Aちゃん、んで甚爾くんとどこ行くん？」

『武器庫だよ
　呪具を甚爾にあげるって約束しちゃってね…
　はっきり言うととても迂闊だった、不本意』

「さっさと選んでとっととこんなとこ出て帰りてー」

「甚爾くん、帰る場所あるん？
　無さそうやし、何なら一生俺が養ったるで」


あるわ。

俺にだって家ぐらいあるわ。

何なら妻帯者だし子供もいるし。

てか何だよこいつ、ナオ…ナオト。

どう考えても異常者だろ。

俺養いたいってあの女共と同じ思考回路じゃねぇか。


「俺にだって帰る場所はあんだよ
　広い家で使用人がいるような場所じゃねーが
　それでも十分にして十全にして万全な場所だ
　…ナオト？」

『偶に良い事言うのに…』

「甚爾くん、俺直哉な」


ーー

『No.34』「呪具について」→←『No.32』「推理について」

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す