甚爾は私の弟ですが【呪術廻戦】

「No.28」『車内について』 ページ28

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八ツ橋とおたべを食べようと決意した私。

現在甚爾と本家に帰っています。

ここまで来ても気乗りしない様で不貞腐れてるけど、
あの時(昔)の様に、
駄々を捏ねずに付いて来てくれているところを、
そこだけを見ると成長した気はするが…。

寝ている。

寝ているのだ。

禪院家(本家)からの使徒とでも言うべきなのか、
刺客とでも捉えるべきなのか、
ただの従業員と表すべきなのか。

わざわざお迎えに来てくれた人の運転する車の中で
まさかの爆睡をし始めたのだ。

それが1人で窓の外を腕を組み眺めながらだったの
ならば、私も口を出さない。

肩を預けて寝るだとか寝言を言うのは可愛いもので。

何故1人で後ろの座席を占領して、
更には快適な枕と毛布を独占し、
挙げ句の果てに寝相が悪く今にも座席を破壊しそう
な状況に陥っている。

その上本人は心地良く寝ているのだから…全く。

困ったを通り越して迷惑の先の厄介事にまで
発展しているとは考えてすらいない事だろう。


『…後どれぐらいで着きますか？』

「えっ…1時間半程かと存じますが」

『鵺で飛んだ方が早く着きそう…』


のように、禪院家(うち)からの使徒、もとい刺客、
或いは従業員の従者くん改め、再埼(さいさき)まとめくんに
八つ当たりをする羽目になってしまったのは
一体どこの誰の弟のせいなのだろうか…。

などと分かりきった、考え尽くされたような事を
考え始めてしまう始末である。


聞かれていないが答えよう。

再埼まとめくんとは初めて会ったわけでは無い。

私より若いが、
わりかし付き合いは長いと記憶している。

だが、身分が物を言う家である。

家から見れば、私は相伝の術式持ちで本家の女、
彼は知識が豊富なだけの男、程度の存在である。

砕けた物言いが出来ない立場は大分辛い。


ああ、暇だ。

頭を動かしたくない。

いっその事、私も甚爾と同じ様に寝てしまおうか。

そんな事を助手席に座っている私はふと、思ってしまった。

なぜあの時他の何かではなく
『呪具あげる』などと軽率に言ってしまったのか。

過去の自分は一体何を考えていたのだろう。


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