第三話 ページ5
人ならざるものが目の前に現れた。
というか井口の頭に吸い付いていた。
「…けて」
「いまなんじですかあ」
佐々木は大絶叫。
然し甘露寺だけは優しそうな顔をしてこういった。
『今は夜の九時よ。どうしたのかしら?』
「そんなこと言ってる場合じゃないわよ!…井口!」
「たす…け…て…」
頭部の半分が何かに呑まれている。
「ひっ…!井口…!私…もうダメだわ…!」
佐々木は恐怖からか耐えられず涙を流し座り込んでしまった。
_私が助けなきゃいけないわ。_
甘露寺の頭にそう浮かんできた。
『こっ!こらっ!貴方!ちょっとおイタが過ぎるんじゃない!?
佐々木先輩!立てますか?』
「…!無理よ…立てない…腰が抜けてるのっ…!恐怖で足に力が入らないの…!」
『さ、佐々木先輩!!先に逃げて助けを!』
「…で、でも!」
『私の事はいいんです!早く!早く逃げて下さい!』
「…っ」
『佐々木先輩!私達のためにも助けを呼んでください…!』
そう言うと、佐々木は力を振り絞って逃げる。
その姿が見えなくなると甘露寺は目の前の何かを見据えて、深呼吸をする。
『こんばんは!私、あなたとお話したいなぁって思ってるの!だから、ちょっとだけ私の話を聞いて欲しいわ!』
伝わらない。
意思疎通が出来ない。
どうしようもない。
『…どうしよう』
遂には弱音を吐いてしまった。
『私、今は武器も何も持ってないの…。だから貴方を一息に祓ってあげられないわ』
眉を下げて小さく囁く。
甘露寺は煽りや見下しで言ったのではなく、本当に可哀想だと思っているからそう言ったのだ。
だが、それがいけなかった。
その言葉が何かの逆鱗に触れ、何かは甘露寺に襲いかかる。
然し、甘露寺はまるで猫のようにふわりふわりと尚且つものすごいスピードで避けていく。
『…。(意外と強い…私の体力が持つかどうかの戦いね…)』
_________
「はぁ…はぁッ…!出れた…!はぁッ…!」
「佐々木先輩!?」
「虎杖くん!!!と、誰?!…
いや、そんなことはどうでもいいのよ!!
井口を…!甘露寺ちゃんを助けて!!」
「Aが中にいるのか!?」
「私…!立てなかったの!怖くて、力が入らなくて…!言われた…甘露寺ちゃんに!
逃げろって…!逃げて助けを呼んでって…!」
先程の事を思い出したのかボロボロと涙がこぼれ落ちる。
その瞳は、先程の恐怖と不安でゆらゆらと揺らめいていた。
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sou(プロフ) - 夏油さんが闇落ちしていない世界観!!とっても幸せです!そして蜜璃ちゃんとの双子っていう設定がもう勝利すぎて可愛いです!!♡ (2022年1月29日 19時) (レス) id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
イナアレオリ - 良かった傑様闇落ちしてなくって安心しました神様仏様ありがとうございます (2021年7月11日 15時) (レス) id: f4313b7def (このIDを非表示/違反報告)
蝶華 - とても面白かったです 更新楽しみに待ってます! (2021年4月14日 5時) (レス) id: 68aa4e53df (このIDを非表示/違反報告)
豆腐 - ちょっとずつで、いいので更新頑張ってください。私はずっとあなたの更新待ってますから。体にも気をつけて頑張ってください。(・∀~)♭ (2021年4月4日 12時) (レス) id: c3188baa62 (このIDを非表示/違反報告)
マシュマロベビー(プロフ) - ラッキーさん» わあい!!嬉しいです!!これはご期待にそわなければ!!!!(必死) (2021年3月4日 20時) (レス) id: 875c9450d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マシュマロベビー | 作成日時:2020年12月11日 21時