【アイナナ】Hiver【千】 (ページ7)

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03-2 千side(02-3の内容) ページ7

「実は…不注意で先ほどまで鬱(ふさ)いでいたのですが、すっかり元気になりました」
「何かあったの？」
「えっと……すごく下らないのですが……、昨日の夜9時からの番組を録画し損ねていまして…」

彼女は先程、呼び鈴がなる前までのことを話した。
彼女は心底悲しそうな顔をして、絶望したとか、僕が来るまでの気持ちを話した。

「大好きで大好きで仕方のない方がゲストで出ていらしたのに、録画し損ねていて…本当にショックで絶望して…。死にたいとすら…。すごく下らないことでごめんなさい」

思い出してまた泣けてきたのか、彼女の瞳にはうすらと涙が滲む。

「それってもしかして、昨日の、僕がゲストだった？」
「そうです、千さんがゲストで出ていらした番組です」
「そう…。僕は、下らなくなんかないと思うけどね。寧ろ、大好きで仕方ないなんて言ってくれて嬉しいよ。ありがとね」
「千さん……ごめんなさい、また泣けてきちゃいました…」
「いいよ、僕がそばにいてあげる」
「…すみません、ごめんなさい……。ありがとうございます…そういっていただけて、私、すごく救われます…。誰かが傍に居てくださるのは、とても、安心します…。ありがとうございます…」

僕は彼女の涙を拭ってやる。
彼女の涙は暖かかった。