【アイナナ】Hiver【千】 (ページ1)

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01-1 貴女side ページ1

─雨が降っていた。

雨が降ると、必ず嫌なことを思い出した。
忘れていたい、嫌な記憶。その全てで雨が降っていた訳ではないのだけれども、一つ思い出すと、芋蔓式にずるずると思い出してしまうものだった。

こんなときは雑誌を読もう。Re:vale(リヴァーレ)の載っている雑誌。つい昨日発売されたばかりの、真新しい表紙。Re:valeの二人が、新曲の衣装に身を包み映っている素敵な表紙だった。まず表紙だけで惚れ惚れする格好良さだった。

ぱらりとページを捲る。Re:vale以外の特集アーティストはあとで目を通すとして、今はRe:valeだけが見たかった。こんな日には、Re:valeに癒されるに限る。

私─崎田(さきた) AはRe:valeの大ファンだった。あの音楽が好きだ。

百(もも)と千(ゆき)でぴったり重なる歌声も、聞く人間を魅了するサウンドも。あの楽曲たちを千が作っているのは、皆が知る常識であった。私は歌うのが好きであったために、Re:valeの楽曲にはすぐに惚れた。

私はRe:valeの二人ともが大好きだが、強いて言うなら千が一等好きである。
あのミステリアスな美人の、意外にも笑いの沸点が低いギャップ。
度々番組内で語っている、音楽に対する熱意。
きちんと言葉にするのは難しいのだが、私は千に、アーティストとしても、異性としても惹かれている。

そんな千に会えるチャンスの締め切り日が迫っていた。

それはある番組の企画が始まりだった。

Re:valeの二人が、一般視聴者のお悩みを解決する、というありふれたような企画だった。
トップアイドルRe:valeが自らに会いに来てくれるような機会はそうそうあるものでもなく、私は然程期待はしていなかったが、企画に応募をすることにしていた。

千に会えるかもしれない。

倍率は凄まじくとも、行動に移さなければ0のままだ。期待すればしただけ、結果に泣く羽目になるのなら、期待はせずに、行動に移するべきなのだ。そう思っていた。

まだ出してはいないのだけれど、明日辺りには出しに行かなくてはならない。
明日が晴れていればいいのに、と葉書を取り出した。
「当たればいいな」と思いながら、葉書に文字を載せていく。想いを乗せていく。