記憶 ページ9
Aside
傑「まったく、本当にバカだねAは...。私の格好なんてして身代わりにでもなるつもりだったのかい?」
隣に座れば弱々しく呟かれた言葉。
怖かった。
ただただ怖かったけど、私は手を伸ばした。
夏の頭の中を覗けば、いつかの自分を見ているようだった。
ー呪術は弱者(非術師)を守るためにあるー
その言葉は五条悟の頭の中を覗いたときにも聞いたセリフ。
でも、沢山の理不尽を見て、いつしかそれが逆転してしまった。
そして、私を高専から持ち出して以降、夏には私と同じ感覚が見られた。
ーAを見ていると、懐かしく思えて...今度こそ守りたいって思ってしまうー
会ったこともない私への懐かしさ。
同様に、私も会ったことのなかった夏への懐かしさがあった。
五条悟の頭の中で夏油傑という名前を聞いてからは、尚の事だった。
そして、次に流れ込んできたのは、見ないほうが良かったかもしれないと後悔する内容だった。
ー最後の最後で分かった...見た目は猿...でも私は、Aが好きなんだ...ー
それは自身へ向けられた好意だった。
でも、今更そんなもの知ったところで...
私は湧き上がってきた感情に蓋をしてお目当てのものへとたどり着く。
ー誰がなんと言おうと非術師は嫌いだ。でも別に、高専の連中まで憎かったわけじゃないー
ーもしかしたら...違った方法もあったかもしれないけど...結果として...Aと出会えたから、悔いはないさー
最後まで、夏の言葉には私がいた。
ーAへ
Aは変態だからすぐ人の頭覗きたがるし、もし私の頭の中を覗いてもいいように遺言でも考えておこうかな。
Aは、長生きしてね。"ここで死ぬべき人じゃない"からー
まるで、百鬼夜行が失敗するのを分かっていたように用意されていた遺言に薄れていた記憶が舞い戻った。
私と夢を語り合ったあの人は、
平和を願ったあの人は、
私を匿ってくれたあの人は、
夏油傑と言う名前だった。
覗くのをやめれば自身の目からは涙が溢れていた。
傑「Aの、えっち。見たでしょ...」
力なく笑う夏とそれをまるで自分の事のように泣きそうな顔をした五条。
遠い昔、まだ人間だったときの姿になれば、夏は驚きもしなかった。
傑「その姿、何故だろうね...すごく懐かしい気がする」
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moo(プロフ) - リクエスト作品ありがとうございます!ギャグとシリアスのハーモニーが最高に面白かったです!夏呼びが堪らなく愛おしいですー! (7月12日 4時) (レス) @page15 id: e3fdbdb203 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - 初コメ失礼します。七海建人のビビリなウサギちゃんと言うお話が大好きでいたのですが、伊織様だと知らず、ビビりましたw続編なのですが出ていないのでバグだと思います。もう一度設定する事をお勧めします!多分治ると思うので...更新無理のない程度で頑張ってください (7月10日 14時) (レス) @page12 id: 2307c0fefd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊織 凛 | 作成日時:2023年7月9日 19時