「貴方だけの音を」:6 ページ27
私とハヤトさんはステージの上で互いをじっと見つめながら、静寂な空間の中で唯一やけに騒がしく聞こえる自分の鼓動に耳を澄ましていた。
「こんなところに突然呼び出してしまってすみません。でも今日は…貴女に伝えたいことがあるんです」
キャラメルを煮詰めたような甘い茶色の瞳に私の姿をしっかりと映しながら、彼は言葉を続ける。
「私は貴女のことを初めて見た時、とても綺麗な人だと思いました。こんなこと面と向かって言うのも恥ずかしいのですが…私は貴女の側にいる時、本当に楽しいと心から思っていたんです」
彼は長い睫毛で縁取られた瞳を閉じて、今までの思い出を噛み締めるように笑った。その言葉に、噓偽りは一切感じ取れない。
再び目を開けた時、彼はぐっと決意を固めた顔で___心から願うように、私に言葉を向ける。
「だから___私はもっと、貴女のすぐ側で…いえ、それ以上。誰にも引き裂けないくらい、もっと近くで貴女のことを知りたいと思った。
…だからどうか、これが単なる私のわがままだとしてもお許しください。
____Aさん、好きです。私と、お付き合いしていただけませんか?」
そう告げたハヤトさんの顔は、今までにないくらい真っ赤だった。
私の方に差し出した右手がかすかに震えている。
私は彼の、精一杯の告白の言葉を聞いて___ちょっと、笑ってしまった。
彼には申し訳ないと分かっていながらも、口に手を当ててふふっと短く笑ってしまった。その反応に、ハヤトさんはおろおろと不安そうにこちらを見ている。
「ど…どうかしましたか?」
「い、いえ…ただその…ちょっと、プロポーズみたいに聞こえちゃって」
少し照れ笑いをする私の言葉にハヤトさんは再び顔を耳まで真っ赤にして、「そ、そういうものでは…!いえそうなんですけど…」と支離滅裂な回答をぶつぶつと呟いて。
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こみ - 私もこの1年間高2A組だったのですごく嬉しかったです!幸せでした! (2021年4月4日 15時) (レス) id: a0adc0f2be (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - ばちぅ兼もてゃさん» こんにちは。コメント、そして読了ありがとうございます!続編の方は別のお話と同時進行の予定ですので、もうしばらくお待ちください。 (2020年6月20日 18時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
ばちぅ兼もてゃ - こんにちは...ばちぅ兼もてゃです...最初から最後まで全部読んでました、執筆お疲れ様でした!続編も楽しみにしてますね、もちろん読みます (2020年6月20日 18時) (レス) id: 603073c1b4 (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 蒼渇さん» 蒼渇さん、コメントありがとうございます。楽しんで頂けたようで何よりです。よければこれからもお付き合い頂ければ励みになります。 (2020年6月2日 14時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
蒼渇(プロフ) - ひぇ…めちゃくちゃキュンって来ました…好きです!!!!!!!無理せず更新頑張って下さい! (2020年6月2日 10時) (レス) id: c685f96854 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊織 | 作成日時:2020年5月30日 14時