「文化祭とほんの少しの魔法」：６ ページ21
私がそう笑ってみせると、彼女は不安そうだった顔色を少し明るくして、ぎゅっと腕に掴まった。
遠くからカタカタと鳴る物音に怯えたり、物陰から飛び出た人体模型に悲鳴を上げたり。彼女の表情は、相変わらずころころと変わって＿＿＿その度に私の腕にしがみついて、ちらりと目を合わせてくる。
その姿が可愛らしくって、出口を抜けて心を撫で下ろしていたAさんの後ろからおどかしてみると、まるで猫の様に小さく跳ねて驚いて、しばらく呆けた後ぽかぽかと私の胸を軽く叩いてきた。
冗談ですよ、と笑うとAさんは真似するように同じ様に笑った。
＿＿＿ああ、その顔が本当に、私の心をかき乱していく。
そんな感情に浸っていると、ポケットに入れていたスマホが震えた。慌てて取り出してメッセージを見ると、緑仙さんがLINEを送ってきていた。
緑仙作戦開始の時間だよ。体育館裏に集合
その短い言葉に、私は唇をぐっと噛む。そうだ、今日は…。
「どうしたんですか？」
スマホを覗こうとしてきたAさんに画面を隠し、視線を少し空中に泳がせて適当な誤魔化しを口にした。
「えっと…ちょっと友人に呼ばれたので、体育館の方に行ってきますね」
彼女は頷いて、手を振って見送ってくれた。私は校則違反にならない程度の速度で廊下を駆けた。
体育館裏には、緑仙さんに夢追さん。その後ろには軽音部の方々が揃って立っていた。
私が全員と目を合わせ、緑仙さんに歩み寄ってまるで合図をするかのように頷いてみせた。
「それじゃあ、始めようか」
瞳に宿した光を私に向け、緑仙さんは体育館裏口の扉を開けてステージ裏へと入って行った。
私もそれに続いてステージ裏へと進む。足取りがいつもより重く感じた。
＿＿＿＿待っていてください。いま貴女に、届けたい思いがあるんです。
次回、堂々の最終話後編。
最終話後編 「貴方だけの音を」：１→←「文化祭とほんの少しの魔法」：５
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こみ - 私もこの1年間高2A組だったのですごく嬉しかったです！幸せでした！ (2021年4月4日 15時) (
レス) id: a0adc0f2be (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - ばちぅ兼もてゃさん» こんにちは。コメント、そして読了ありがとうございます！続編の方は別のお話と同時進行の予定ですので、もうしばらくお待ちください。 (2020年6月20日 18時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
ばちぅ兼もてゃ - こんにちは...ばちぅ兼もてゃです...最初から最後まで全部読んでました、執筆お疲れ様でした！続編も楽しみにしてますね、もちろん読みます (2020年6月20日 18時) (レス) id: 603073c1b4 (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 蒼渇さん» 蒼渇さん、コメントありがとうございます。楽しんで頂けたようで何よりです。よければこれからもお付き合い頂ければ励みになります。 (2020年6月2日 14時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
蒼渇(プロフ) - ひぇ…めちゃくちゃキュンって来ました…好きです！！！！！！！無理せず更新頑張って下さい！ (2020年6月2日 10時) (レス) id: c685f96854 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：伊織 | 作成日時：2020年5月30日 14時
