「体育祭、二人の距離」:2 ページ3
それから、リレーや大玉転がし、ダンスなど様々な競技でクラスごとの点数は上下し、私達二年A組の順位は、二位のC組との僅差で一位を保っていた。
「続きまして、二年生の騎馬戦です!」
放送委員の張った声が校庭に響き、私達二年生はそれぞれ位置に着いた。
他のクラスメイト二名と騎馬戦の体勢を組み、私は二人の上に乗って戦闘モードに気分を切り替える。
敵対するクラスに睨みを効かせ、教師が開始のピストルを鳴らした瞬間、一斉に動き出す。
周囲から歓声や応援の声が上がる中、私も内心夢中になって敵の帽子を狙いに行く。
順調に二、三人帽子を奪い取ったところで、異変は起きた。
カンカン照りの日差しの中、私は水分を摂る事も忘れてしまっていた。
三人目の帽子を奪い取り、すぐ側で審判役をしていた教師が私のチーム側に旗を上げ勝利を知らせた。
次の瞬間。
ぐらり、と視界が傾いた。
世界に靄がかかったように意識がぼんやりとしていく。
辺りから悲鳴が上がり、教師が慌てて担架を取りに行った。
「Aさん!!」
目を見開いて私の顔を覗き込み、私の名前を呼んだのは、ハヤトさんだった。
*
目を開けると、白い天井が見えた。
しばらくぼーっと天井の照明を眺め、はっとして慌てて上体を起こす。
薬品棚がある辺り保健室だろうか。窓際の白いベッドで私は寝ていたみたいだった。
窓の外___校庭からは相変わらず歓声が聞こえてくる。
「私…倒れたんだっけ…」
「そうですよ」
声がした方を見ると、ハヤトさんが体操着にジャージを羽織ったまま、ベッドの横にある丸椅子に座って私を見ていた。
「ハヤトさん…?」
「貴女、水分補給忘れていたんですよね?」
「そういえば、前飲んだのいつだっけ…」
まだ意識がぼんやりとしていて、上手く頭が動かない。だがそれでもハヤトさんが私のことを気にかけているのはわかった。
ハヤトさんは私の手をそっと握り、顔をずいっと近寄らせて口を開いた。
「…本当に、貴女は…どうして自分をおろそかにするんですか」
彼の瞳に私の顔が映る。何か怒っているみたいだった。
「あの、ハヤトさん…?仕事は…」
「貴女が倒れたと聞いてすっ飛んで来たんですよ。…気が気じゃなくて」
顔を俯かせたまま、いつもより声色が暗いままそう述べた。こんなハヤトさん、今まで見たことなかった。
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こみ - 私もこの1年間高2A組だったのですごく嬉しかったです!幸せでした! (2021年4月4日 15時) (レス) id: a0adc0f2be (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - ばちぅ兼もてゃさん» こんにちは。コメント、そして読了ありがとうございます!続編の方は別のお話と同時進行の予定ですので、もうしばらくお待ちください。 (2020年6月20日 18時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
ばちぅ兼もてゃ - こんにちは...ばちぅ兼もてゃです...最初から最後まで全部読んでました、執筆お疲れ様でした!続編も楽しみにしてますね、もちろん読みます (2020年6月20日 18時) (レス) id: 603073c1b4 (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 蒼渇さん» 蒼渇さん、コメントありがとうございます。楽しんで頂けたようで何よりです。よければこれからもお付き合い頂ければ励みになります。 (2020年6月2日 14時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
蒼渇(プロフ) - ひぇ…めちゃくちゃキュンって来ました…好きです!!!!!!!無理せず更新頑張って下さい! (2020年6月2日 10時) (レス) id: c685f96854 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊織 | 作成日時:2020年5月30日 14時