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◼️ ページ11

「ありがとう。」







少し恥ずかしそうにAはこっちを見て笑う。







「それでね志麻に渡したいもんがあんねん。」





鼻声になりながらAはリュックから何かを取り出した。





それはタオルだった。





「志麻、運動神経良いからどうせ高校も運動部入んのやろ?やからそん時使って欲しいなって」





「ありがとう…」





そのタオルをAが考えて買ってくれたんだと思うと嬉しくなる。






それと同時に焦りが出てくる。






「…ごめん!俺、そがなちゃんとしたの無い!」






一応手紙は…と言いながら出すとAは可笑しそうに笑う。






「手紙くれんの?めっちゃ嬉しい!別に返してもらおうと思ってやってへんし…」






そう言いながら、いつもの俺とは掛け離れている大人っぽい手紙を受け取る。






「___。」






そこで何か呟いていたが俺には聞き取れなかった。





「何か言うた?」





「いや何も無いよ。それよりさ、一つだけわがまま聞いてくれる?」





Aの口から《わがまま》という単語が出るのが驚きやった。





いや、普段もわがままは言っている。でもそれはなんか違うくて、説明が出来ないけれど…とにかくこんな面と向かって言われたのは初めてだった。






「ええよ。当たり前や!」






「あのさ、第二ボタンが欲しい!」






Aの顔が赤くなるのが分かる。






…そして俺の顔も







しかしそんな中、俺でもAでもないうるさい声が聞こえた。








「おーっす!俺1番…?!ってもう人おるやん!」







「お前もうちくっと静かに入ってこれんの?」







卒業式、というだけで一番乗りで教室に来ようとしていたそいつはガッカリしている。







正直言うと俺もこんなに早く人が来るとは思わなかった。そのぐらいの時間なのだ。






「…A、卒業式終わったらいつもんとこで会お。」






コソッと耳打ちをすると彼女は頷いた。

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作者名:莉緒 | 作成日時:2021年11月15日 22時

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