第十四話 「秋の始まり、恋の予感」:1 ページ48
夏休みが終わり、二学期が始まった。
だが九月といえども夏の暑さがまだしっかりと残っており、制服はまだ夏服。
そんな季節の変わり目で、私とハヤトさんは体育祭の準備をしていた。
毎年10月、にじさんじ高等学校で行われる体育祭。部対抗リレーや学年ごとの種目で派手に競い合い、協調性を育むことを狙いに毎年開催される。
「まだ暑い日が続きますし、熱中症対策も必要ですね」
「一応救護班も用意してはいますが…」
そんな業務的な会話を生徒会室で交わし、ある程度の打ち合わせを終えると一気に肩の力を抜いた。
書類をまとめながらハヤトさんの方をちらりと見ると、偶然目が合って微笑み返された。その優しい顔に不意に鼓動が早まる。
夏休みに四人で遊んでから、私はハヤトさんのことを今まで以上に意識するようになった。
確かに元々気になってはいたけれど、ここ最近…それも彼の事を知るたびに、嬉しくなるというか何とも言えない気持ちになるのだ。
「どうしましたか?難しい顔して」
そんなことを考えていると、ハヤトさんはいつの間にか私の顔を覗き込むようにして心配していた。その顔の良さと鼻孔にほのかに届いた良い香りに、思わず頬が赤くなる。
「え、あ…な、なんでもないです!それより、もう下校時間なので帰りましょうか!」
「? あ、そうですね」
何も気にしないといった感じにハヤトさんは学生鞄を担いで教室の扉に手を掛ける。そのあとを追って私も教室を出た。
*
加賀美side
放課後の廊下はいつもより静かで、校庭の方から運動部のわずかに聞こえるくらいだった。
私とAさんの足音だけがやけに大きく響いて、それがかえって緊張感を出していた。
…そういえば、Aさんに私の秘密がバレたあの日も、こういう綺麗な夕焼けの日だった。
あの時は本当に焦ったけれど、彼女が寛容な態度で私の事を受け入れてくれたから、私もすぐに彼女の事を抵抗なく受け入れることができたのだと思う。
ふと横を見ると、私のすぐ隣を肩を並べるようにAさんが歩いている。
私の視線に気づいたのか、顔をこちらに向けてにこりと笑った。
___ああもう、本当に貴女は、ずるい人だ。
赤くなった頬を手で覆い隠しながら、心の中でそう思った。
「秋の始まり、恋の予感」:2→←「加賀美ハヤトという少年の生い立ち」:3
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HUMIZUKI・文月 - 加賀美インダストリアルって確かオモチャの会社じゃなかったでしたっけ?まだまだ、浅いので間違ってたらごめんなさい。とても楽しく拝見しています! (2021年8月8日 22時) (レス) id: 600526697d (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 甘鶴摩未来さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けて幸いです。第二幕もどうぞよろしくお願いします。 (2020年5月30日 14時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
甘鶴摩未来(プロフ) - にじさんじの夢小説を探してて、読み始めたのですが本当に素敵な作品だと思いました!第2幕も楽しみです!! (2020年5月30日 13時) (レス) id: c441c2b911 (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 究極のかにかまさん» 究極のかにかまさん、コメント、さらにはTwitterのフォローまでありがとうございます!とても嬉しいです。頑張って書きますのでどうぞよろしくお願いします。 (2020年5月16日 15時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
究極のかにかま(プロフ) - 初コメント失礼します。興味本位で入ってみた小説なのですが、とても面白いです。Twitterの方もフォローさせて頂きました。これからも応援しています。 (2020年5月16日 14時) (レス) id: 65c58cf727 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊織 | 作成日時:2020年5月11日 13時