「加賀美ハヤトという少年の生い立ち」：２ ページ46
「私は…加賀美ハヤトです、私で良ければ、是非！」
傍から見れば奇妙なこの出会いが、私の人生を大きく変えることになったのだ。
それまで友達というものが存在しなかった私にとって、二人はかけがえのない存在だった。
音楽の事はもちろん、それ以外＿＿＿勉強や、他愛もない会話もした。
学校も立場も違う三人の学生が集まって、誰にも邪魔させない夏の貴重な時間を過ごす。
その時間が私にとって、「加賀美家の長男」ではない「加賀美ハヤト」という人物でいられる数少ない時間だった。
「ねー、ハヤトはさ、進路どうするの？」
スタジオからの帰り道。夏空を背景に、夢追さんが私にそう訊ねてきた。
「ハヤトの家ってさ、厳しいんだろ？やっぱり進学校とか？」
「厳しいというわけではありませんが…でもまぁ、そうですね。家系に恥じないよう良い所に進みたいです」
特に何も考えずにそう答えた。そうすることが当たり前だと思っていたし、親が喜ぶならそれでいいと考えていた。
「お二人はどこに進むんですか？」
「僕はゆめおと同じにじさんじ高校に行くよ」
ね、と緑仙さんは夢追さんに目配せをし、夢追さんもそれに頷く。二人の微笑ましい光景を見ていると、ふと緑仙さんと目が合い、少し真面目なトーンで質問された。
「ハヤトはさ、僕らとも立場が違うし僕が人の進路にとやかく言えた人間じゃないけど…ハヤトは、それで本当にいいと思ってるの？」
「…どういう意味ですか？」
「前にも言ってたけど、ハヤトは親が決めた学校に通ってるじゃん。ハヤトは親が喜ぶならそれでいいって言ってたけど、それはハヤト自身の選択じゃないと思う」
緑仙さんの目はじっと私の瞳を覗き込むようにして、話を続ける。
「こんなこと僕が言うと変に聞こえるかもしれないけどさ、ハヤトはどうしたい？」
「私…は」
考える。今まで考えたことがなかった。ただ親が褒めてくれたから、それに従っていた。
由緒正しい家計の良い子としてい続けるか、二人と過ごす時間を＿＿＿自分自身でいられる時間を選ぶか。
緑仙さんと夢追さんが私の顔をじっと見つめる。二人の瞳に、私の顔がぼんやりと映り込んでいる。
「加賀美ハヤトという少年の生い立ち」：３→←番外編 「加賀美ハヤトという少年の生い立ち」：１
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HUMIZUKI･文月 - 加賀美インダストリアルって確かオモチャの会社じゃなかったでしたっけ？まだまだ、浅いので間違ってたらごめんなさい。とても楽しく拝見しています！ (2021年8月8日 22時) (
レス) id: 600526697d (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 甘鶴摩未来さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けて幸いです。第二幕もどうぞよろしくお願いします。 (2020年5月30日 14時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
甘鶴摩未来(プロフ) - にじさんじの夢小説を探してて、読み始めたのですが本当に素敵な作品だと思いました！第２幕も楽しみです！！ (2020年5月30日 13時) (レス) id: c441c2b911 (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 究極のかにかまさん» 究極のかにかまさん、コメント、さらにはTwitterのフォローまでありがとうございます！とても嬉しいです。頑張って書きますのでどうぞよろしくお願いします。 (2020年5月16日 15時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
究極のかにかま(プロフ) - 初コメント失礼します。興味本位で入ってみた小説なのですが、とても面白いです。Twitterの方もフォローさせて頂きました。これからも応援しています。 (2020年5月16日 14時) (レス) id: 65c58cf727 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：伊織 | 作成日時：2020年5月11日 13時
