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「時は短し恋せよ少年」:4 ページ22

ぷーっと頬を膨らませてそう言ってきた緑仙さんの言葉を、私は頭の中で反芻する。

やがてその意味を理解した途端、自分の頬が耳まで一気に紅潮していくのがわかった。

「ちょっ…そ、そんなこと…!」

「誤魔化してる割に顔真っ赤だね」

横からやり取りを眺めていた夢追さんがからかってきて、私は思わず顔を掌で覆い隠してしまう。

「うっわー!顔真っ赤だよ、めずらしー!」

ぷぷ、といたずらに笑う緑仙さんの声を聞きながら、熱くなった頭で考える。

確かにAさんは私にはもったいないくらい良い人だ。私の拙い演奏も話も真面目に聴いてくれて、その度に花が咲いたような笑みを見せてくれる。

その姿がただ愛おしくて、もっと彼女のことを知りたいと反射的に思ってしまうことも珍しくはない。

でもそれは、果たして恋と呼べるものなのだろうか?

それにこんなことを考えてしまうのは私だけで、彼女は私の事をどう思っているのかもわからない。

…これがもし単なるエゴなら、押し付けるのは失礼じゃないのか?

生まれて初めてだった。こんな気持ちも、たった一人にこんなにも心をかき乱されるのが、不思議と心地良く感じてしまうことも。

だからこそ、こんなにも考え込んでしまう。

「ねぇ、ハヤト」

そんな風に考え込んでしまっていると、横から夢追さんに肩を叩かれた。

「僕はそういう話、緑仙よりも疎いかもしれないけど…もしAさんにそういう気があるなら、応援するよ」

そう言って、いつものように優しく微笑んだ。その言葉に乗っかるように緑仙さんも口を開いて、

「そうそう!というか、むしろそういう話は僕らにもしてよ。何のために隣にいると思ってんの?」

二ッと歯を見せて笑うと、緑仙さんの耳につけていたピアスが揺れた。

____私は、いつの間にこんなにも良い友達に恵まれたんだろう?

思わず口角が上がってしまう。そんな私の姿を不思議そうに眺めている二人に、私はいつものように笑って。

「…そうですね、ありがとうございます」

と、三人の影が伸びていく通学路でそう言葉を述べたのだった。

第九話 「鼓動は雨音にかき消されて聞こえない」:1→←「時は短し恋せよ少年」:3



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設定タグ:夢小説 , 加賀美ハヤト , 2434   
作品ジャンル:ラブコメ
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HUMIZUKI・文月 - 加賀美インダストリアルって確かオモチャの会社じゃなかったでしたっけ?まだまだ、浅いので間違ってたらごめんなさい。とても楽しく拝見しています! (2021年8月8日 22時) (レス) id: 600526697d (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 甘鶴摩未来さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けて幸いです。第二幕もどうぞよろしくお願いします。 (2020年5月30日 14時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
甘鶴摩未来(プロフ) - にじさんじの夢小説を探してて、読み始めたのですが本当に素敵な作品だと思いました!第2幕も楽しみです!! (2020年5月30日 13時) (レス) id: c441c2b911 (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 究極のかにかまさん» 究極のかにかまさん、コメント、さらにはTwitterのフォローまでありがとうございます!とても嬉しいです。頑張って書きますのでどうぞよろしくお願いします。 (2020年5月16日 15時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
究極のかにかま(プロフ) - 初コメント失礼します。興味本位で入ってみた小説なのですが、とても面白いです。Twitterの方もフォローさせて頂きました。これからも応援しています。 (2020年5月16日 14時) (レス) id: 65c58cf727 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:伊織 | 作成日時:2020年5月11日 13時

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