「夕に染まる貴方の音」：４ ページ14
普段の優しい声からは想像もできないくらいの、低音。そして、スクロールなどが入り混じったハードロックの歌詞と音程。
夕陽に染まった教室に、彼の歌声とギターの音色が響いた。
喉の奥、それよりももっと深くから絞り出すような声。
その時、私はふと今日の彼の行動全てが辻褄と合っていることに気付いた。
朝から眠い目を擦ってノートに書き殴っていたのは、きっとこの曲の歌詞。さっき一人で練習していたのだって、全部これの為だったんだと理解できた。
やがて演奏が終わると、彼は少し満足気に笑ってギターを下ろした。
「…すごい」
無意識のうちに、私は拍手を送っていた。
加賀美さんは少し照れくさそうに礼をして、「…ありがとうございます」と呟いた。
「凄いですね！あの、実は私も音楽とか好きでよく聞くんですけど…プロと大差ないくらいの歌声で…！」
興奮状態になっているあまり、思い浮かんだ言葉を必死に取り繕って思いを伝える。その言葉を聞く度に彼は嬉しそうに笑うので、時間を忘れてこのまま話していたいくらいだった。
だがそういうわけにもいかないので、私達二人は下校の準備をする。彼は片づけを終えてギターケースを担ぎ廊下に通じる扉の取っ手に手を掛けた。
扉を引く前に、加賀美さんは「そうだ」と何か思い浮かんだような声を上げ、私の方を見て振り返る。
「もし、貴方さえ良ければ…口止め料、と言いますか。また私の演奏を聴いていただけませんか？」
年相応の少年のような笑みをこちらに浮かべて、私にそう告げた。
私はその言葉を聞いて、一瞬びっくりしたが＿＿＿すぐに笑って。
「…私でよければ、もちろんです！」
と、彼の提案を容易く受け入れたのだった。
第六話 「互いに響き、交わる糸」：１→←「夕に染まる貴方の音」：３
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HUMIZUKI･文月 - 加賀美インダストリアルって確かオモチャの会社じゃなかったでしたっけ？まだまだ、浅いので間違ってたらごめんなさい。とても楽しく拝見しています！ (2021年8月8日 22時) (
レス) id: 600526697d (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 甘鶴摩未来さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けて幸いです。第二幕もどうぞよろしくお願いします。 (2020年5月30日 14時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
甘鶴摩未来(プロフ) - にじさんじの夢小説を探してて、読み始めたのですが本当に素敵な作品だと思いました！第２幕も楽しみです！！ (2020年5月30日 13時) (レス) id: c441c2b911 (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 究極のかにかまさん» 究極のかにかまさん、コメント、さらにはTwitterのフォローまでありがとうございます！とても嬉しいです。頑張って書きますのでどうぞよろしくお願いします。 (2020年5月16日 15時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
究極のかにかま(プロフ) - 初コメント失礼します。興味本位で入ってみた小説なのですが、とても面白いです。Twitterの方もフォローさせて頂きました。これからも応援しています。 (2020年5月16日 14時) (レス) id: 65c58cf727 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：伊織 | 作成日時：2020年5月11日 13時
