第五話 「夕に染まる貴方の音」:1 ページ11
その日の放課後。
私は書記の雑務を終え、学生鞄を持って生徒会室から出たばかりだった。
廊下を軽く見渡すと、窓から差し込んだ夕陽が廊下を茜色に染めて、いつもとは違う雰囲気を見せていた。
誰もいない校舎。自分の足音だけがやたらと大きく響いて、変に感覚が研ぎ澄まされてしまう。
そういえば、今日はあんまり加賀美さんの姿を見てないな、と思ってふと考える。
朝は教室にいた。けど今日はずっと、なんだか忙しそうに何かをメモしていた。
何か呟きながらメモしていたけど、本人があまりにも集中していたので割って入るのは失礼かな、と思って覗くのは遠慮した。
そんなことを考えていると、もう昇降口の前まで来ていたのでそのまま階段を降りようとした。
その時だった。
「…、〜♪」
人の声が微かに聞こえた。
思わずはっと意識を引き戻されて、冷静になる。再び声が聞こえると、気のせいじゃないと確信して私は足音を立てないようにして音の方へと歩み寄る。
近付くにつれて、ギターの音も聞こえてくる気がした。
しばらく歩いて、とある教室の前までたどり着いた。そこは、軽音部の部室だったのだ。
こんな最終下校時刻間近まで、一体何をしてるんだろう?
喧しく鳴り続ける心臓を抑えて、息を吐いて呼吸を整える。
…大丈夫。生徒会の一員として、下校を喚起するだけ。何も怖くなんてない。
よし、と小さく呟いて顔を上げる。
扉の取っ手に手を当てて、勢い良く横に引く。
___そしてその先には、思いもよらない人物がいた。
「夕に染まる貴方の音」:2→←第四話 「少年コンプレックス」
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HUMIZUKI・文月 - 加賀美インダストリアルって確かオモチャの会社じゃなかったでしたっけ?まだまだ、浅いので間違ってたらごめんなさい。とても楽しく拝見しています! (2021年8月8日 22時) (レス) id: 600526697d (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 甘鶴摩未来さん» コメントありがとうございます。そう言って頂けて幸いです。第二幕もどうぞよろしくお願いします。 (2020年5月30日 14時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
甘鶴摩未来(プロフ) - にじさんじの夢小説を探してて、読み始めたのですが本当に素敵な作品だと思いました!第2幕も楽しみです!! (2020年5月30日 13時) (レス) id: c441c2b911 (このIDを非表示/違反報告)
伊織(プロフ) - 究極のかにかまさん» 究極のかにかまさん、コメント、さらにはTwitterのフォローまでありがとうございます!とても嬉しいです。頑張って書きますのでどうぞよろしくお願いします。 (2020年5月16日 15時) (レス) id: 472e77b4e7 (このIDを非表示/違反報告)
究極のかにかま(プロフ) - 初コメント失礼します。興味本位で入ってみた小説なのですが、とても面白いです。Twitterの方もフォローさせて頂きました。これからも応援しています。 (2020年5月16日 14時) (レス) id: 65c58cf727 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伊織 | 作成日時:2020年5月11日 13時