Eingang&Walzer ページ4
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金管のハリのある音と共に先程までの余韻が断ち切られ、弦楽器の柔らかい音が驚きを宥めていく。
再び穏やかなワルツだ。
そのメロディが波立っていた心を落ち着かせていく。
彼と微笑み合い、小さなフロアで限られた動きのみで踊っていく。
するとそんな私達を咎めるように、音が鳴り響く。
深く、重厚感のある音楽が鳴る。
音が大きくなり、自ずと私達の動きも少し機敏になる。
だんだんと音が大きくなり、音が多くなり、メロディが豪華になっていく。
それでも優雅さを失わないそれに、自然と笑みが溢れ、足がリズムに合わせて自然と動いていく。
音圧が私達を圧倒し、縦横無尽にフロアを踊り、舞いたい衝動に駆られる。
しかしその重い音もよく聞けば後味の優しいメロディだ。
踊っていても疲れる気配がない。
それほど彼と踊るのは楽しく、音楽はその感情を増幅させる。
フロアを端から端まで踊り、周りの者を圧倒する。
でも皆が笑顔だ。
今この場には身分などあってもないも同然で、皆一様に音楽の虜となった者だった。
いつもは笑みを見せない彼も、今ばかりはいつも以上の満面の笑みを浮かべていた。
そんな彼にまた私は恋をするのだ。
そう思った時、音楽が止まる。
次はどんな音楽だろうか。
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作者名:イオ x他1人 | 作成日時:2021年6月17日 22時