裏切り ページ16
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「Aちゃん、そっち頼んだ!!」
的確に飛んでくる指示に、はい!と柄でもなく大きな返事をして応じる。そんなふうに考えながらも目の前のヘスリヒを斬っていく。
ザシュッ!ザシュッ!
相変わらず聞いていて気持ちの良い音ではないが慣れたもので、最初の頃はたまに怪我をしていたものの最近では全くと言っていいほど怪我はしない。ヘスリヒの相手も大分つまらなくなってしまった。
『リーダー、終わりましたよ!』
私は目の前のヘスリヒを斬り終え、ヒュッと軽くナイフを振ってべっとりとついた血を振り落とす。私が所属するクランのリーダーに向かってそう大声で言う。
するとわかった!休憩していいよ!とこれまた大声で返事が来る。私はそれにはい!と返事をし、お言葉に甘えて仮拠点へと向かう。
仮拠点とはどのクランでもポルーションエリア攻略の時に安全地帯を用意し、休憩を取る場所である。
1度ヘスリヒに見つかってしまえば暫くはずっと狙われ続けるため、自分に担当が終わったらすぐに休憩をし、次の戦いに備えなくてはならないのだ。
私は悪夢が始まってからのこの数ヶ月間でかなり成長した...と思う。そこらの男には近接戦では負けないし、同じズーハーの女の子にも負けたことはない。あ、でも1人例外がいるけど。
私の所属するクランは、女の子は私以外にもいるが全員ハイルクンストかヴァイセであり、私のように前線で駆け回るようなズーハーの子はいない。
たまにズーハーの男と女の子が医務室に閉じこもることがあるが、それは見ないふりをしている。音が漏れてくるが気にしない。気にしたらおしまいである。
元々女の子がこの前線クランには少なく、研究所に行く子がほとんどで、それ以外の女性は皆服飾や生鮮などの生活必需品関係の仕事へと行ってしまっている。
そのため前線にいる男達は欲が溜まりに溜まっているのか、所構わず発散しようと迫って来る。何度リーダーに苦情を申し付けたことか。
でも申し付けるたびに君がいないとダメなんだ、だとかあの時のことを忘れたのかい?だとか色々と理由を並べて引き止めようとして来るのだ。本当に厄介である。
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作者名:イオ x他1人 | 作成日時:2021年1月25日 22時