一目惚れ【 2 】 (ページ37)

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────知らなかった。

轟くんが、No.2ヒーローエンデヴァーの息子だったなんて。

確かに考えてみれば炎はエンデヴァーの個性だし、話を聞いていると個性婚であることがわかった。

────エンデヴァー。

私が助け出された時にスパイだと声を上げた人たちの、代表者だ。

『っ〜〜〜〜〜!!』

今でも思い出せるあの冷たい瞳。

────貴様は早々に縄につくべきだ。

そう言われたのをよく覚えている。

…轟くんが、あのエンデヴァーの、息子…？

「────左を使わず勝つことで、俺はあいつを完全否定する」

その言葉でわかった。

轟くんの恨みの元凶は、これだったんだ。

父親への恨み。

自分の個性への、恨みだ。

…そんなの。

「…辛いに、決まってるよっ…」

…似すぎていた。

『っ…』

「っ！A…」

そんな声にはっと顔を上げると、轟くんが目を見開いて私を見ていた。

『と、轟く』

「…ちょっとこっち来い」

今にも泣きそうな気持ちで見上げれば、轟くんは低い声でそう言って腕を引く。

控え室に入るよう促されると、私は椅子に座った。

「…聞いてたのか」

『ごめ、なさ…』

「っ、謝んな、怒ってる訳じゃねぇ」

出てきた涙をそっと拭うと、轟くんは真剣な顔で言う。

「…聞いたらお前、気にするんじゃねぇかと思った。

…隠してて悪かった」

『っ…‼』

そう。彼の恨みは私と同じ。

全くと言っていほど、同じなのだ。

それを気にしてくれている程なのだから、もうこれは私が関わっていい案件ではない気がした。

私が何か言ったところで、それは全て作り物になってしまう。

…この件に関して、私は無力なのだ。

『うう、ん…大丈夫だよ』

少し考えが頭を過ぎると、不意に耳に息を吹きかけられた。

『ひゃあっ…！』

間抜けな声が出て咄嗟に口を抑えるものの、ビクッと肩がはねる。

『と、轟く…っぁ、』

何も言わない轟くんは私の手首を掴んで強引にどかせると、そのまま前回と反対の首筋に吸いついた。

「…わりぃ」

そう言うと、今度は唇を奪われ。

徐々に深くなっていくそれに胸板を弱々しく叩く。

『んっ…はぁ、はっ…』

肩を上下させる私の頭にぽん、と手を置くと、轟くんはふっと笑った。

「…大丈夫だ。お前は何も心配すんな」

『っ‼』

ガチャ、と扉が閉まる音が、やけに大きく聞こえた。