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────ゴールまでもう少し。
このまま1位になれば。
自分の存在意義を大衆に証明できる。
そう思って速度を上げようとした時だった。
────後ろから、緑谷くんが来たのは。
「っ‼きゃっ…‼」
予想だにしていなかった地雷の大量爆発に個性発動が遅れ吹き飛ばされる。
と、肩に手が回って誰かに抱きとめられた。
「っA！大丈夫か!?」
「う、うん…‼」
轟くんが受け止めてくれたようだけど、はっとすると3人で一直線に走り始める。
2人も足の引っ張り合いを辞めたようだ。
緑谷くんの背中が見える。
「…っ行かせないっ！」
自分の口から思いがけない言葉が出ながら、私は低くかかんで────勢いよく地を蹴った。
物凄い速さで緑谷くんに迫り。
会場へと続くトンネルを抜けて。
あと、1歩で。
「────緑谷ァァァァァァァ‼」
────届かなかった。
「っ…く」
勢いを止めるために消していた抵抗を戻すと、体がふらつく。
「っ…？」
後ろによろけたのに地面につかず、ゆっくり目を開けると。
轟くんが少し焦った顔で私を見ていた。
「無理しすぎだ…‼怪我とかねぇか…？」
「大、丈夫…最初から飛ばしすぎちゃったね…」
ありがとう、と頬をかきながら言うと彼の表情もふっとやわらぐ。
「次の種目まで少しは時間あるだろ。」
そう言って肩を抱き寄せられ、轟くんに体重を預けるようになる。
「っ！/////だ、大丈夫だよ…‼」
「いいから休んどけ。気張りすぎだ」
「う…/////」
轟くんが優しいのは知っているし、自意識過剰とかじゃなく私のことをよく見てくれているのも知っているけれど。
今日は、優しすぎるというか。
────まるで何かを隠すような、覆うような、そんな感じの。
いつもと変わらないはずなのに、どこか違う。
────彼に似合わない感情が、奥底で燃えているような。
少し不安になるけれど、私にはどうしたらいいのか分からない。
自分が持て余しているその感情を、轟くんにどうこう言える立場ではないから。
私は轟くんに恨みなんて抱いて欲しくない、それだけなのに。
────どうしてこんなに、息が詰まるのだろう。
続々と生徒がゴールする中、私の不安は募り。
────俺の感情は濃さを増して。
あんなことになるなんて、思ってもみなかった。
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作成日時：2017年12月12日 21時
