一目惚れ【 2 】 (ページ26)

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「…A、最近疲れてねぇか？…その怪我も」

「へっ？こ、これはかすり傷です！」

HR後、支度をする中轟くんが言った。

「まさかまた無理してるんじゃねぇよな」

少し低い声で言う轟くんに、慌てて訂正する。

「ち、違うよ！無理はしてない！ちゃんと寝てるから！」

「…ならいいが…」

そうやって歩きながら教室を出ようとした時だった。

外に生徒が群がっていて、出れない。

「おいおいなんだよ、誰かに用か？」

切島くんが言う中、爆豪くんが躊躇せずに歩いって言った。

「敵上視察だろ。そういうの意味ねぇから」

「────おいおい、どんな奴らだと思って来てみれば、そんな偉そうな奴ばっかなのか？」

違います…‼と緑谷くんたちが首を振る。

後で聞けば心操くん、という彼は、不意に私に目を止めた。

「…あぁ、あんたか。

────6年前の事件の被害者って」

「────っ…‼」

唐突に過去を掘り返されて息を呑む私に、爆豪くんの眉間に皺が寄る。

「聞いてたより随分と美人だな」

「…おい」

全身が震えてきて、息が浅くなってきた。

クラス中を戸惑いが流れる中、隣から殺気が放たれた。

私の肩に手を回して、強く引き寄せる。

「その辺にしとけよ

────次なんか言ったらただじゃすまさねぇ」

耳元でする低い声。

私は動揺を隠せず、ただ下を向いて視線を左右させる。

「ははっ、ヒーロー志望が言う言葉かよ

…俺は油断してるとごっそり足元掬っちゃうぞっていう宣戦布告しに来ただけだ」

「…はっ」

不意に、爆豪くんが歩き出した。

「…どけ、モブ」

「ば、爆豪！お前の性で敵増えただろ！」

切島くんが追う中、爆豪くんが振り返った。

「────上に立てば、関係ねぇんだよ」

それに、と彼は付け足す。

「人の傷狙って抉る奴に負けるわけねぇだろ」

私は震える足に何とか力を込める。

「…A、早くここ動くぞ。

歩けなかったら体重預けろ」

前を睨みながら言う轟くんの袖を握り首を振ると、轟くんは私を少し持ち上げてがつがつと歩き始めた。

「──気にするなよ」

帰り道。途中でお姫様抱っこをされて、ゆっくり歩く。

「っ、う、ん

…か、くご、してたつもりなんだけど、なぁ…」

やっぱり直接そうなると、中々にきついものだ。

「辛かったらすぐに言え。そうならなくなるまでそばに居る」