一目惚れ【 2 】 (ページ23)

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────朝のことを、ずっと考えていた。

『──お前を世間に認めさせたい』

相澤先生が言ったその言葉。

私の心に大きく響いて、今も反響している。

だけどテレビの怖さを、私はよく知っている。

────6年前。

私がオールマイトに助けられた事件は、全国へ大々的に報道された。

『──ヴィランに5年間捕らわれた悲劇の少女』

『──洗脳され殺人に手を染めた疑いも』

『────えぇ、彼女は恐らくオールマイト殺害を目的として攫われ、育てられたんでしょう。問題はその期間です。5年も捕らわれていたとあれば、もうヴィランに服従している可能性もありえます。いつか我々を欺き、牙を向く可能性も検討しなくてはなりません』

色々な人が好き勝手に色々なことを言って、本当のことがなんなのかよく分からなくなって。

私が病院に入ってから1ヶ月ニュースはそれでもちきりだった。

毎日のように押しかけてくる報道陣をオールマイト始めヒーローが規制したけど、その中には私を殺そうとする人もいた。

哀れみ同情され、一方では憎まれ蔑まれ。

────この世界に、いてはいけないのだと思った。

体育祭に出れば。

上手く行けば名誉挽回できるかもしれない。

だけど失敗すれば、これまでより批判の声は強くなる。

何も知らない人達が、好き放題私に石を投げてくるのだ。

────歩くだけで。動くだけで。

────下手したら、響香ちゃん達にも。

「…っ‼」

重すぎる。

私が今抱えているものは、私には大きすぎた。

戦慄で思わず肩をかきだいた時。

とん、と頭に手が乗せられる。

「大丈夫か？」

「と、どろき、くん」

「食堂行くぞ」

気づけば昼休みに入っていたようで、轟くんは私の顔を見るなり手を引いて歩きだした。

「蕎麦、食うか？」

「っ…うん」

そして出された蕎麦を黙々と食べ始める私に、轟くんは優しく聞く。

「朝、相澤先生となに話してたんだ？」

辛いなら話せ、とも付け足して。

「っ私────」

話すと、轟くんは真剣に聞いてくれた。

「…失敗って、なんだ？」

「え…」

「失敗が負けるっていう意味なら、Aは心配ねぇだろ」

「…」

「それに、俺が隣にいる。少なくともA1人で立たせることは絶対させねぇ」

「…うん」

その言葉で、私は決心した。