一目惚れ【 2 】 (ページ15)

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「Aちゃんどした？元気ないけど…なんかあったん？」

お茶子ちゃんが顔を覗き込んでくるので、慌てて笑顔を作る。

「大丈夫だよ、なにもないから」

────昨日。すごく楽しかったのだ。

最後に私がやらかしてしまうまでは。

『っ！やっ…』

すごく怖くなって、反射的に突き飛ばしてしまった。

轟くんはその後、悪いと言ってすぐに帰ってしまったのだ。謝る暇も与えられず、もやもやとした気持ちが広がって眠りにはつけなかった。

その性で心なしか体が重い。

今日の朝も轟くんはいなくて。1人で学校に来るのが久しぶりだった。

今は昼休みだけれど、轟くんとはそれまで一言も話していない。

壁を作られているような気がして、すごく不安になる。

────轟くんとこのまま話さなくなって、別れることになってしまったら？

────私なんかいらないって、言われてしまったら。

そうしたら、私は。

「A！」

「は、はい！あ、響香ちゃん…」

「どーしたのよ、思いつめた顔して」

「な、なんでもないよ、大丈夫だから…」

「そんな無理してる笑顔で言われたって信じられないっての。ほら行くよ、ご飯」

腕を引っ張られて席につき、お弁当を広げても食欲は湧かなくて。

何も手につけず止まってしまう私に、女の子達の手も止まる。

「Aちゃん、本当に大丈夫なん？

…昨日、なんかあった？」

「…っ」

的確な所を刺されて息を呑む私に、やおももちゃんが気を使ってくれる。

「大丈夫、今は轟さんは食堂ですわ。なんでも話してください」

それでも黙り続ける私に、女の子達も何も言えなくなる。

「…だ、大丈夫だよ！そんなに心配しなくても！すっごく楽しかったから！」

「ほんとに…？あたしらも途中で見失っちゃったから…って、あっ…」

馬鹿！と響香ちゃんが三奈ちゃんに言う。

私はぼーっとして気付かずに、無理矢理笑顔を見せた。

「すっごく優しかったし、楽しかったよ、ちゃんと」

「ならいいん…やけど…」

「ちょ、ちょっとジュース買って来る！」

その場にいたくなくて、私は教室を抜け出そうとした。

だけど扉を開けるとそこには轟くんがいて。

「っ…‼」

轟「…‼」

私は何故かすぐに視線を逸らすと、そのまま教室を後にした。

「なにやってるんだろ…私っ…」